1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740242
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 俊晴 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (00273532)
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Keywords | ミリ波 / 遠赤外 / 光源 / 電子ライナック / コヒーレント放射光 / 遷移放射 |
Research Abstract |
本研究は電子ライナックを用いて発生させるミリ波コヒーレント放射を、固体分光の新たな光源として利用して、低エネルギー固体分光研究における新たな計測法の確立を目的とする。 今年度は、昨年度構築したミリ波コヒーレント放射専用分光システムを使って、亜酸化窒素(N_2O)ガスの純回転吸収スペクトル、及び塩化ナトリウム(NaCl)結晶中に含まれる水酸イオン(OH^-)のオフセンター励起吸収スペクトルの分光測定を行った。 まず、N_2Oガスはビームトランスポートパイプの中に2.0×10^4Paの圧力で封入した。ガス中を光が通る距離は9.3mである。吸収スペクトルは波長0.5mmから10mmの範囲で測定し、基底状態の量子数でJ=2からJ=20までの吸収が観測された。吸収スペクトルの波長から計算した回転定数はB=0.41948±0.00048cm-1であり、過去に発振器を用いて測定されたデータB=0.4190106±0.00000012と比べて精度が悪いものとなっている。これは、マルチバンチ電子ビームであることからくるスペクトル分解能の制限によるものであり、電子ライナックのシングルバンチ運転が可能になれば改善できる。また、吸収スペクトルはミリ波の全領域に及ぶ広範囲にわたって測定され、吸収強度の変化を調べることができた。これは広い波長スペクトルを持つコヒーレント放射光の利点である。強度変化はボルツマン分布に従うと予想できるが、観測された強度変化はそれよりも急なものであった。 次に、NaCl中の不純物OH^-のオフセンター励起吸収スペクトルを測定した。サンプルは断面が10×10mm、厚さが5.6mm、濃度が0.5mol%のものを用意した。これをライトパイプ仕様のクライオスタットにセットし、液体ヘリウムにより4.2Kから1.4Kまでの温度変化を測定した。しかし、観測されたスペクトルからはエネルギー準位を決定することができず、濃度を変えたサンプルでの測定が必要である。
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Research Products
(1 results)