1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740243
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河野 日出夫 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00273574)
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Keywords | 半導体 / 金属クラスター / 透過型電子顕微鏡法 / 電子スピン共鳴 / 電子エネルギー損失分光 |
Research Abstract |
シリコン-金2元系の透過電子顕微鏡観察(TEM),透過型電子エネルギー損失分光(EELS)測定および電子スピン共鳴(ESR)測定を行い,以下の結果を得た. 1,熱拡散によって金をシリコン中に導入した試料において直径nmの金クラスターの生成を確認した.直径4nm単一の金析出物からの電子エネルギー損失スペクトルを得,金の内核電子の励起に起因するエッジを観測することに成功した.(電子顕微鏡学会で報告) 2,様々な条件下で熱処理により金を拡散させたシリコンにおいて,金と他の不純物金属(鉄,クロム)との複合体の電子スピン共鳴を観測したが,金のみによる共鳴は見られなかった.これまでシリコン中の単独の金はESR不活性であることが理論的に予測されていたが,今回の研究により金クラスターはおそらくサイズの依らずESR不活性であることが予想される.またこれまで水素雰囲気中での熱処理により様々な金属不純物のESR活性化が報告されている.しかし,金については水素処理に依るESR活性化は今回見られなかった.このことから,1000℃以上の温度ではシリコン中の水素と金との相互作用は非常に微弱であることが分かった.(ESR応用計測研究会で報告) 3,シリコンダングリングボンドが金の熱拡散により消えることをESRで確認した.このことは結晶粒界等シリコン中の欠陥構造と金との強い相互作用を意味し,金のクラスタリングにおけるシリコン結晶欠陥構造の重要性を示している. イオン注入によって金をシリコン中に入れた場合,熱拡散で導入するより局所的ではあるが遙かに高密度に金を入れることができるので,より高精度の分光データを得ることが可能になる.来年度はイオン注入によって金をシリコン中に入れたものについても同様の手法を用いて研究を続けていく予定である.
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