1997 Fiscal Year Annual Research Report
X線回折による変調構造をもつ誘電体の圧力誘起相転移
Project/Area Number |
09740249
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
下村 晋 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (00260216)
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Keywords | 相転移 / 不整合相 / 誘電体 / [N(CH_3)_4]_2CuCl_4 / 圧力 / X線回折 / サーモクロミズム / [P(CH_3)_4]_2CuCl_4 |
Research Abstract |
本研究の目的は、圧力をかけることにより分子間距離の変化を通して相互作用を直接変え、常圧下では現れない相や相転移機構、物質間の系統性を明らかにすることにある。特に、圧力下で、単位格子の大きさが基本構造(正常相)の有理数倍(整合相)もしくは無理数倍(不整合相)を持つ結晶について、単結晶X線回折実験を行い、相転移機構を詳細に調べた。 具体的には、[N(CH_3)_4]_2CuCl_4について圧力-温度相図を調べた結果、不整合相が二つの領域からなり、正常相・整合相・二つの不整合相の領域が一点で共存するという特異な多重臨界点の存在が明らかとなった。さらに、高圧力領域を調べるためダイヤモンドアンビル型高圧セルによる単結晶実験を室温で行った結果、三つの高圧相が存在することを新たに見いだした。特に、最高圧相への相転移では、結晶の色が黄色から緑色へと劇的な不連続変化をすることがわかった。これは、CuCl_4^<2->分子の構造が、歪んだ立体的な四面体型から平面的な四角形へと変化したためと考えられる。 さらに、分子置換による化学的な圧力効果と実際の圧力効果との関係を調べることを目的とし、NをPで置換した[P(CH_3)_4]_2CuCl_4単結晶を合成し同種の実験を行った。その結果、高圧下(室温)では新しい相は現れず、約6GPaまで三倍周期の整合相が安定であることがわかった。一方、結晶の色は、対称性を保ったまま黄色から黄緑色へと連続的に変化していくことがわかった。現在、低温高圧下でX線回折実験を行える装置を試作中であり、両物質の圧力-温度相図の系統性についても調べる予定である。
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