1997 Fiscal Year Annual Research Report
構造相転移により引き起こされる物質表面・界面のモホロジーの変化とその観察
Project/Area Number |
09740252
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 功 関西学院大学, 理学部, 助教授 (10212010)
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Keywords | 構造相転移 / 表面・界面 / 分域構造 / 臨界現象 / X線回折 / 誘電体 |
Research Abstract |
チタン酸ストロンチウムSrTiO_3は高温超伝導体発見のきっかけを作った酸化物超伝導体として有名であるが,ソフト・フォノンが史上初めて観測された誘電体として,また最近では量子強誘電体としての性質を持つなどの物性物理学の発展において極めて重要な役割を担ってきた物質である.今回はSrTiO_3単結晶の105K構造相転移の前後における(100)表面構造の変化をX線回折を用いて観察した.SrTiO_3は上述の高温超伝導体薄膜の基板材料としても利用されることから,特に(100)面表面の高真空・高温における表面構造についての研究は数多くなされている.しかし何故か低温における表面の微視的な研究は報告例が見あたらない.この物質では逆空間のR点におけるモードのソフト化に伴って生じる複雑な分域構造が105K以下でのバルク構造の特徴であるが,表面ではこの分域構造の発展の仕方が,(相転移温度-絶対温度)^<0.6>に成ることが初めて明らかになった.この臨界指数=0.6と言う値はバルクにおける実測値である1.0(=理論的にも予想される値)に比してほぼ半分の値であり,表面における臨界現象がバルクにおけるそれと質的に異なる新しいタイプのものであることをつよく示唆している.現在はバルクと表面に於ける相転移現象の差違を説明すべく種々の理論・モデルを検討している段階であるが(例えば,表面とバルクとでの臨界領域の違い,表面におけるバルクには無かった特殊な結合項の存在,分域壁における双1次的な歪みの影響,等),最終的には相転移におけるユニバーサリティの違いを裏付けるために更に進んだ実験を続ける必要がある.なお今回の結果は論文にまとめ,物理学会での口頭発表・欧文誌への投稿を行った段階にある.
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