1997 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブのトンネル分光による電子状態の研究
Project/Area Number |
09740270
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 明比古 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70272458)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 一次元物質 / 走査トンネル顕微鏡(STM) / 走査トンネル分光(STS) |
Research Abstract |
広領域走査型の走査トンネル顕微鏡(STM)を用いることによって、一次元物質カーボンナノチューブのSTM像を観察した。本研究の特徴は、広領域走査型STMを用いることにより基板上に確率的に存在するカーボンナノチューブを比較的容易に測定し多数の結果を得、比較するというものである。基板としてグラファイトを用いることにより、直径約300Å-500Å、長さ約1μmのカーボンナノチューブの像が得られている。 室温でのトンネル分光(STS)実験では、現在のところ、状態密度がフェルミ準位でギャップのあるスペクトルのみが得られているが、S/N比が悪く詳細は不明である。一方、液体窒素温度下での測定においても、すべての測定において状態密度がフェルミ準位でギャップのあるスペクトルが得られるが、スペクトルの再現性に乏しく、見積もられるギャップの大きさは、大きな分布を持つ。また、グラファイト基板のみでの測定結果も、測定毎の分布内である。この原因のは、広域走査型のため走査用のピエゾが長く、その振動が影響していることと、基板とチューブに相互作用がある可能性が高い。振動は、測定位置を変えてしまうのであるが、ピエゾの振動の範囲で、チューブの電子構造が本質的に変化し、大きなスペクトルの変化があるのは、考えづらい。チューブと基板との相互作用が比較的強く、トンネルスペクトルは、基板の影響を大きく受けていること、さらに、チューブと基板との相互作用の場所依存性が寄与していると考えると実験結果が理解できる。また、再現性の欠如に関しては、測定系の電気的な不安定性も影響していると考えられる。現在のところ、チューブの本質的な電子構造を明らかにするには至っていないが、基板との相互作用の影響、測定装置の問題点が明らかになりつつあり、測定条件が確立しつつある。
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