1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740275
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
阿部 聡 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (60251914)
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Keywords | 強相関 / 重い電子系 / 超低温物性 / 核磁性 / 静磁化 / 核断熱消磁 |
Research Abstract |
本研究では、強電子相関物質であるCeRu_2Si_2のマイクロケルビン領域での静磁化測定のため、(1)希釈冷凍機と銅1段核断熱消磁冷却装置の整備をおこない、測定系に外部より流入する熱量を4nW以下に減少させ、測定系を1週間以上1mK以下に保ち測定に十分必要な温度を得ることが可能になった。(2)SQUIDを検出器とした高精度静磁化測定装置の開発をおこない、試料の静磁化の変化を-2.6、+1.3gaussの磁場中で測定できるようになった。(3)白金NMR温度計と^3He融解圧温度計を用いた温度測定システムの製作を行った。購入備品であるディケード変成器は、^3He融解圧温度計の測定システムにおいて、キャパシタンスブリッジとして使用することによって、温度測定の精度を1μK程度まで向上させることが可能になった。 これらによってCeRu_2Si_2の静磁化を温度範囲280μK〜4.2K、磁場範囲-2.6〜+1.3gaussで測定することに成功した。その結果、CeRu_2Si_2の静磁化は50mK以下から最低温度まで一様に増加し、この変化をCurie-Weiss則にあてはめるとWeiss温度は約-1mKとなること、さらにこの静磁化の変化は約35μ_N(0.02μ_B)の有効磁気モーメントに起因することが明らかになった。しかし静磁化は最低温度まで磁気相転移に伴う異常な変化はみられず、280μKまで常磁性であることが初めて明らかになった。 現在、さらに冷却装置の能力を向上させ、より低い温度を可能にしCeRu_2Si_2の基底状態を実現させるために、大型の核ステージの開発、静磁化・交流帯磁率の同時測定システムの開発に着手している。
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