1998 Fiscal Year Annual Research Report
一次元系および梯子系銅酸化物の電子状態と励起スペクトル
Project/Area Number |
09740276
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠山 貴巳 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (70237056)
|
Keywords | 強相関電子系 / 銅酸化物 / 厳密対角化法 / 電子状態 / 励起スペクトル |
Research Abstract |
第一に、コーナー共有型の銅・酸素鎖を持つ銅酸化物絶縁体において、超交換相互作用の大きさが系の次元性に強く依存しているという実験事実に注目した。この原因を微視的な観点から明らかにすることは、電子状態の特徴を解明することにつながるからである。一次元物質の超交換相互作用は二次元物質の約二倍、梯子系の横木方向の超交換相互作用は足方向の約半分というのが実験から得られている特徴となっている。銅酸化物を支配する各種パラメー夕のなかでも、銅3d軌道と酸素2p軌道の間の電子の飛び移りエネルギーや、酸素2p軌道間のそれに超交換相互作用の次元・物質依存性を生じさせる起源があることを系統的かつ詳細な電子状態の研究から明らかにした。その要点は、結晶構造に起因する静電的マーデルングポテンシャルが、銅3d軌道や、酸素2p軌道に関係した電子遷移に大きな寄与を及ぼすということである。この結果は、銅酸化物の電子状態におけるマーデルングポテンシャルの重要性を示唆している。 第二に、昨年度行なったスピン励起にギャップを持つ一次元銅酸化物の低エネルギー励起の研究を発展させるため、梯子格子系がスピンギャップを持つ事に注目してその絶縁体状態における一粒子励起スペクトルを調べた。一次元の場合と同様、スピンギャップの存在のために準粒子が存在することは以前から知られていた。本研究では、スピンギャップのもう一つの効果として、スペクトル強度もスピンギャップの存在に敏感であることを示した。スピンギャップの起源がd波RVB状態となっていることが重要であり、高温超伝導体との接点を明らかにすることが今後の課題である。その他、梯子格子系の電子状態と相分離の関係やストライプ構造の安定性に関する研究も行った。
|
-
[Publications] 水野義明: "Superexchange Interaction in Cuprates" Physical Review B. 58巻・22号. R14713-R14716 (1998)
-
[Publications] 遠山貴巳: "Stripe Stability in the Extended t-J Model on Planes and Four-Leg Ladders" Physical Review B. (発表予定). (1999)