1997 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下におけるYMn_2の反強磁性スピンゆらぎのNMRによる研究
Project/Area Number |
09740284
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鄭 国慶 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助手 (50231444)
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Keywords | 反強磁性スピンゆらぎ / 超伝導 / NQR / 高圧 / 核スピン格子緩和率 |
Research Abstract |
本研究の目的は,銅酸化物以外の物質におけるスピンゆらぎの特性を調べ、銅酸化物高温超伝導体におけるスピンゆらぎとの相違点を明白にし、超伝導発現におけるスピンゆらぎが果たす役割を考察することである。研究対象物質としてYMn_2を選び、高圧力の環境下でこの系の性質を調べた。これまでの研究で、高圧下におけるYMn_2の反強磁性スピンゆらぎの特徴および銅酸化物高温超伝導体におけるスピンゆらぎとの違いが明らかになりつつある。銅酸化物高温超伝導体においては、二次元面内における反強磁性スピン相関が格子常数の二倍以上の距離におよび、さらにスピンゆらぎの特性エネルギーが高いことがわかっている。それに対して、YMn_2の反強磁性スピンゆらぎは空間的に局在し、特性エネルギーも低いことが本研究から示唆された。 YMn_2は常圧下で反強磁性的に秩序化するラーベス金属間化合物であるが,0.4GPa以上の圧力下では磁気秩序が消失し,スピンゆらぎのみが存在する。本研究では0.45GPaから1GPaまでの圧力下で核四重極共鳴法(NQR法)によりMn核のスピン格子緩和率1/T_1を測定した。その温度依存性から、この系で電子が低温で遍歴的に振る舞い高温では局在化することが示唆された。この結果は電気抵抗の実験結果と定性的に合致する。また、スピンゆらぎの自己無撞着繰り込み(SCR)理論を用いてNQR実験結果を解析した結果、この系のエネルギー幅が銅酸化物のものより一桁以上小さいと推定された。 スピン揺らぎによる超伝導の可能性が理論的に考察されているが、それによると、超伝導の引力となり得るのは高周波成分のスピン揺らぎである。もしこのような理論が正しければ、YMn_2におけるスピン揺らぎのスペクトルが超伝導の発現に不利であると考えられる。
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