1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740302
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 寿敏 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60212304)
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Keywords | 量子スピンモデル / スピンパイエルス転移 / フラストレーション / 圧力効果 / 厳密対角化法 / 一重項波動関数 |
Research Abstract |
高温超伝導体の擬スピンギャップと関連して、一次元量子スピン系の研究が活発に行われている。その中でCuGeO_1は複雑なスピンパイエルス(SP)転移を示す物質である。今年度は主としてこの物質の低温及び高圧下における物性発現機構を解明するために、厳密対角化法及びリカ-ジョン法を用いた研究を行った。成果としてCuGeO_1の以下の特異な性質を統一的に説明できた。(1)転移温度以上で帯磁率が普通のハイゼンベルク模型と合わない。(2)結晶構造が容易に変形するにもかかわらず、SP歪みは非常に小さい。(3)鎖間相互作用は比較的大きいが純粋な物質は低温まで磁気秩序が存在せず、一方で微量の不純物をド-ピングにより反強磁性秩序が現れる。(4)高圧下で転移温度とギャップが増大するにもかかわらず、二量化歪みが小さくなる。 モデルとして結合の二量化と次近接サイトのフラストレーションを導入したハイゼンベルク模型を考える。この系はフラストレーションがある臨界値より大きな場合は二量化が不在でもギャップを持つ。帯磁率の理論と実験の比較、更に中性子非弾性散乱の実験結果と動的構造因子を詳細に検討した結果、フラストレーションが臨界値を越えて予想外に大きいことが判った。この視点に立つと、上記の諸性質やこれまで食い違っていた交換相互作用の大きさの評価などを自然に(多くの場合定量的に)説明することができる。 以上の結果を踏まえて、来年度は更にスピンギャップの理解を深めるために、一重項波動関数を用いた相関長やストリング秩序などの計算、非局所ユニタリー変換による解析的計算、対角化と密度行列くり込み群を併用した開放端での4重縮退の計算などを行い、SP系の他、辺共有の銅酸化物や強磁性-反強磁性の結合交替を持つCuNb_2O_4などの性質を微視的観点から考えて行く予定である。
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