1998 Fiscal Year Annual Research Report
エイジング関係式から見たスピングラスのダイナミクスの研究
Project/Area Number |
09740309
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾関 之康 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (70214137)
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Keywords | スピングラス / ダイナミクス / エイジング / ゲージ変換 / 多重臨界点 / 履歴現象 / 非平衡緩和 |
Research Abstract |
エイジング関係式と非平衡緩和法を利用して、スピングラス転移と動的クロスオーバー領域の解析を行った。 エイジング関係式によって、動的相関関数のシミュレーションが容易になり、非平衡緩和法と呼ばれる新しい方法を組み合わせて、スピングラス転移の解析を行った。この方法は、秩序化した状態からの秩序変数の非平衡緩和を数値的にシミュレートする方法で、統計平均はMCステップを重ねて行うのではなく独立にサンプリングする。このため、系の平衡化から解放されるのでメモリーが許す最大の格子サイズで計算できる、MCステップは動的性質が判る程度の小ステップで十分、各サンプルは独立なの臨界点でもサンプルは少なくて済む、等の利点がある。従来、30^3程度の格子が限界であったが、今回は最大で160^3の格子の解析が可能になり、これまで曖昧だったサイズ効果の不安を取り除く事ができた。 常磁性相、強磁性相、スピングラス相が会合する多重臨界点での動的性質を導出し、動的臨界現象の大域的な変遷を理解することに成功した。残留磁化m(t)は強磁性相では秩序変数に収束し、平衡自己相関関数q(t)はスピングラス相で秩序変数に収束する。両者の緩和指数λ_mとλ_qは、強磁性臨界点ではλ_q=2λ_mの関係にあるが、多重臨界点でλ_q=λ_mと変化することが明らかになった。また、多重臨界点では、強磁性秩序とスピングラス秩序の弱臨界指数(動的指数を含む)が一致する事も示された。これらは動的臨界現象の普遍性の変化であり、今後の研究の端緒となることが期待される。
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