1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740330
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
副島 浩一 新潟大学, 自然科学研究科, 助手 (50283007)
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Keywords | 直接二重光電離過程 / 円二色性 / 電子相関 |
Research Abstract |
本年度の目標は、Heの直接二重光電離過程における円二色性観測であった。Heの直接二重光電離過程は電子相関の研究対象として絶好のものである。それは、光子一つで電子を二つたたき出す現象は電子相関なしでは決しておこらない(コンプトン散乱の無視できるエネルギー領域では)からであり、この反応過程での放出電子の角度相関は電子相関の効果を直接観測できる唯一の方法である。また、He原子は簡単な構造(α+2e)であるため電子相関を考慮した理論計算ができ、実験結果と理論計算の比較が可能となる。しかし、Heの2重光電離断面積は非常に小さいため、その実行は他の希ガス原子と比べて困難であった。 今回、Heランプを使った予備実験を繰り返し、慎重に準備をおこなった結果、長年目標にしてきたHeの二重光電離過程における円二色性の観測に世界に先駆け成功した。以下、具体的にその成果を報告する。 本研究は高エネルギー加速器研究機構・物質構造研究所の放射光施設内のBL-28A(円偏光ビームライン)でおこなった。円偏光使用の利点は、右回り、左回り円偏光を使うことにより完全に同一の実験条件で2通りの実験ができることである。これにより、電子相関関数や双極子遷移行列要素を決定する、いわゆる完全実験の実行が可能になる。 今回の実験では、Heの2重電離しきいエネルギー(79eV)より10eV高いエネルギーの光を使用した。二重光電離過程で生じる2つの電子はこの余剰エネルギー(10eV)を互いに分け合いそれぞれの運動エネルギーとする。今回は1:1、1:2、1:8の割合で余剰エネルギーを分け合った場合についてそれぞれ実験をおこなった。その結果、余剰エネルギー分配のアンバランスさが増していくと円二色性は強くでることがわかった、これは理論予想を支持するものである。ただ、円二色性がでない等配分の場合にも電子の角度相関に右、左円偏光で違いが出てしまった。これは光のなかに予想以上に直線偏光成分が入っているためと結論づけられ、現在直線偏光成分の寄与を取り去る解析法を開発中である。この解析法を使えば、同時に電子相関関数、双極子遷移行列要素を決定できる。 実験解析法を確立することが現在の急務であるが、これもほぼ完成している。電子相関関数おほび双極子遷移行列要素の決定という完全実験は今まで報告されていないので、早急に成果をまとめ発表する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] N.Watanabe, J.Adachi, K.Soejima 他4人: "Fixed-Molecule 1sσg,u Photoelectron Angular Discributons as a Probe of σ^*_g and σ^*_u Spape Resonances of CO_2" Physical Review Letters. 78・26. 4910-4913 (1997)
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[Publications] K.Soejima, M.Shimbo, A.Danjo他3人: "First observation of Circular Dichroism in Angular Correllation Patterns for Two-step and Direct Pouble Photoinization of Xenon" J.Korean Phys.Soc.(印刷中). (1998)