1997 Fiscal Year Annual Research Report
コンパクトサポートをもつ渦の動力学と幾何学的構造診断の数値解析的研究
Project/Area Number |
09740335
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木谷 耕司 京都大学, 数理解析研究所, 助教授 (70211787)
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Keywords | 乱流 / 渦構造 / パッシブベクター / 非線形性の逓減 |
Research Abstract |
滑らかな初期条件から発展する一様等方性衰乱流では、最初の段階で渦層が形成された後に渦管へと遷移することが知られている。こうして出現する渦度の大きな領域は極度に局在した構造をもつ。それらの解析をするため、次のような線形問題との対比による対照実験を行った。 渦線(渦度場の積分曲線)は粘性項も外力項もゼロなら物質的である事に着目し、渦度と物質線要素(パッシブベクター)の時間発展を比較した。もし、両者の初期条件が全く同じであるなら、その後の発展もまったく同じである。そこで、エネルギースペクトルは同じだが、フーリエ係数の位相を乱数で壊したものを初期条件にとり、渦度方程式と物質線要素の方程式を連立して数値的に解いた。 その結果、以下のことが分かった。 ・パッシブベクターのノルムの方が渦度のノルム(エンストロフィー)よりずっと急激に大きくなる。また、この傾向はレイノズル数をあげればますます顕著になることもわかった。 ・この違いは、ストレインテンソルSの主軸系に対する渦度(ないしパッシブベクター)の幾何学配置の違いによる。Sの固有ベクトルとこれらのベクターとの角度の統計を吟味したところ、これらのベクターが、2番目の絶対値の小さい固有値に対応する固有ベクトルと並ぶことにこの違いの原因があることがわかった。 ・エンストロフィーと動粘性率との積(エネルギー散逸率)は、高レイノルズ数極限で粘性率に依存しないことが重要であるが、パッシブベクターについての類似の量はむしろレイノルズ数とともに大きくなることがわかった。このことは、'非線形性の強さ'よりむしろその逓減が乱流の基本性質を決めていることを意味している。
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