1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740341
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田沼 肇 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (30244411)
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Keywords | イオン移動度 / 極低温 / 熱遷移効果 / キャパシタンス・マノメータ / 移動管 / スウォーム / ヘリウム |
Research Abstract |
本研究では実験装置として極低温移動管質量分析計が必要である.この装置は液体ヘリウムによって希薄な気体を満たした容器(移動管)を冷却し,その容器の中にイオンを入射して気体分子との反応を観測するものである.装置の開発は数年前より始められており,外形は既にほぼ完成していた.本年度当初,装置の特性を調べるために予備実験としてヘリウム気体中のイオン移動速度の測定を行ったところ,予想もしていなかった新たな問題点が判明した. この装置では極低温気体の圧力を測定するために真空槽の外部にキャパシタンス・マノメータ(以後,CMと略す)を置き,移動管とCMを細いパイプで連結して使用している.CMは318Kに保たれているため,極低温に冷却された移動管とは温度が大きく異なる.このためCMの示す圧力と実際の移動管内部の圧力は異なってしまう.我々は,この熱遷移効果による圧力差を補正する方法として,Takaishi-Sensuiによって提案された経験的な補正公式を用いてきた.補正方法の妥当性はイオン移動度の圧力依存性から判断することができる.圧力補正が適切であれば移動度は圧力には依存しない筈である.ところが,今回の測定の結果では20mTorr以下の低圧において顕著な圧力依存が観測されてしまった.この問題を解決するため,様々な圧力による測定,さらに連結パイプの径を変えた測定を行い,新たな圧力補正式を求めた.その結果,移動管内の絶対圧力を1%程度の誤差で求めることが可能となった. 本研究の目的である原子トンネル反応の観測のためには移動管内の圧力の絶対値を正確に測定することは極めて重要である.その意味でも今年度の内に圧力補正の問題を発見し,これを解決する方法を見いだすことができたのは大きな成果と言える.
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