Research Abstract |
平成9年度は,可視領域分光反射能特性値そのものの検討と,測定方法に関わる検討,および,いくつかの物理特性や化学特性との比較検討を行った,可視領域分光反射能特性値のひとつであるL*値(明度)は暗色の堆積層を定量的に表現し,この値を用いて,連続的な堆積記録を編纂するコンポジット堆積記録の編纂を行うことができたこと,定量的な値を用いてスペクトル解析などの手法を応用することが可能となり,過去500万年間の1万年単位での時間較正が可能となったことが具体的成果である.色の定量的な表現として分光反射特性は非常に汎用性があることがわかった,測定法や物理・化学特性との関係は,いくつかの検討が必要であることも明らかとなった.ミノルタ製CM2002分光測色装置,二本分光製V-570紫外可視近赤外分光装置を用いて,試料の時間による色の変色状況,試料の状態(乾燥度など)による分光特性の変化,測定条件(たとえば試料セルの形状など)による分光特性への影響などの,分光特性測定における諸問題を検討した.結果,海底堆積物は採取後,特に黄色領域では無視できない色変質が発生すること,機器によって全体の反射は異なるが,分光特性は相関がよいこと,粉末で一定の厚さを保てるセルを用いれば測定誤差は無視できることなどがわかった.物理特性との関係では,分光反射特性は,密度や孔隙率などに影響をうけ,また,含水率も反射(正確には吸収)に関与することが判明した.黒色あるいは赤色といった肉眼的に特徴的な堆積物の色は,含有量とは簡単な相関関係にはないことがわかった.特定の波長の分光反射特性は,物理特性・化学特性の2次以上の関数であることが示唆され,今後更なる検討が必要である.本研究の成果の一部は,Neogene Mediterranean Paleceanography国際学会(1997年9月)で発表し,可視分光反射能を応用した研究は,国際深海掘削計画の報告書に発表される.
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