1997 Fiscal Year Annual Research Report
断層活動に伴う花崗岩質岩の変形-変質過程の解明-野島断層掘削コアを素材として-
Project/Area Number |
09740381
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田中 秀実 愛媛大学, 理学部, 助手 (40236625)
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Keywords | 野島断層 / 活断層 / 兵庫南部地震 / ドリリング / コア / 断層岩 / 柱状図 / 破砕帯 |
Research Abstract |
平成9年5月:工業技術院地質調査所において同所が所有する野島断層掘削コアの切り出し・固定処理を実施し、愛媛大学への搬送を完了した。 平成9年6月〜9月:コアに現れている破砕帯部分を中心として研磨片を作成し、その後破砕組織の肉眼観察・記載を行った。これらの結果は、地質調査所のopen file reportとして刊行された。 平成9年10月〜12月:前回の一連の処理では、破砕帯全体を観察できなかったので、研磨片の作成範囲を断層岩から原岩に戻るまでさらに両側に拡大し、肉眼観察・記載を行った。その結果以下の事項が明らかにされつつある。 (1)野島断層の破砕帯はほぼ垂直な姿勢を示すが、わずかに西に傾斜した逆断層である。そして、破砕帯は断層面を中軸として上盤側で極めて厚く(20m以上)、下盤側で極めて薄い(1m以下)となっている。兵庫南部地震の断層面は中軸帯に保存されている。 (2)主要な剪断帯以外では、野島断層の姿勢に不調和な水平な姿勢の剪断面が卓越する。 (3)上盤側と下盤側では、変形様式・変質様式がともに異なる。すなわち、上盤側では、岩石の紛砕に伴うランダムファブリックが顕著に見られ、また橙赤色を基調とする変質色を呈するのに対し、下盤側では局所的に現れる葉片状カタクレーサイトおよび、青灰色を基調とする変質色に特徴付けられる。変質色から考えると、両者の相違は流体の性質(溶存元素、流量)に大きく依存するものと考えられる。 これまでの処理の結果を総合的に俯瞰するために、断層岩の区分を定義し、それに従って、概略の断層岩柱状図を作成した。この研究を広く公開する第一歩として、地質学雑誌の口絵にコアに現れた典型的な断層岩の組織写真を投稿し、12月に4ページの申請が受理された。
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