1997 Fiscal Year Annual Research Report
リティン炭素同位体比法による陸成層と海成層の直接対比
Project/Area Number |
09740387
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長谷川 卓 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (50272943)
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Keywords | リティン / 炭素同位体比 / ガスクロマトグラフ / 個別炭素同位体比 / 陸成層 / 対比 / GC / IRMS |
Research Abstract |
リティン炭素同位体比測定の前提となるリティンのガスクロマトグラフ上での分離をほぼ達成した。これにより、海・陸成層の直接対比に個別有機化合物の炭素同位体比変動曲線を用いる手法の確立へ大きく前進したといえる。用いた抽出性有機物試料はロシア共和国サハリン州から採取された白亜系泥岩から、ジクロロメタンを溶媒として用いて、超音波分散器によって抽出した。ガスクロマトグラフ上で分離した分子はガスクロマトグラフ/質量スペクトル測定装置によってリティンであることがほぼ確認されたが、最終的な同定のためには標準資料を用いた検討がさらに必要である。ベンゼンとメタノールの混合溶媒を用いた場合でも同じ結果を得た。分離した分子はさらに、ガスクロマトグラフ/燃焼/同位体質量分析装置(GC/lRMS)によって炭素同位体比が個別分子として予察的に測定された。その結果は同じ泥岩資料を用いて全岩分析を行った場合に得られる炭素同位体比の時間的変動曲線とよく一致していた。これらの泥岩資料に含まれる全有機物の大部分はケロジェンであり、そのケロジェンは大部分隆起源であることから、全岩分析の結果得られた炭素同位体比は陸上高等植物の平均的炭素同位体比を反映し、従って当時の大気中二酸化炭素の炭素同位体比を反映していると考えられるが、今回分離に成功した「リティン」と考えられる分子を用いても同様の考察が出来る可能性が示された。リティンはガスクロマトグラフ上で分離できるため、今回用いたような排他的に陸上高等植物を全有機物として含む場合以外にも(例えば湖堆積物などプランクトン起源の有機物が混入する場合)炭素同位体比法を用いて大気二酸化炭素同位体比の時間的変動を知ることが可能であるといえる。従って大気二酸化炭素同位体比変動という共通媒介を用いて世界各地の海・陸成層を比較し、その変動パターンを用いて世界的な直接体比ができるだろう。
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