1998 Fiscal Year Annual Research Report
酸素同位体比および微量元素分析によるアンモナイトの古生態学的研究
Project/Area Number |
09740389
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
重田 康成 国立科学博物館, 地学研究部, 研究官 (30270408)
|
Keywords | 微量元素 / オウムガイ / ストロンチウム / 隔壁 / アンモナイト |
Research Abstract |
平成9年度の研究活動により、フィリピンで捕獲されたオウムガイの殻中のSt/Ca比に約30〜50μごとの周期的な変動が確認された。これはオウムガイの日周的な垂直移動に起因する可能性が高いと考えられ、この可能性を検討するため、今年度はまず水温一定下で飼育されたオウムガイの殼中のSt/Ca比を測定した。 測定に用いた試料は、フィリピンで捕獲された後、水温や塩分濃度が一定の環境下で飼育されたオウムガイ(Nautilus pompilius)の隔壁で、主にEPMAにより5μごとにSt/Ca比を測定した。その結果、St/Ca比はほぼ一定値を示し、周期的な変動は特に見られなかった。 これらの分析から、天然の海で生育したオウムガイにみられるSt/Ca比の周期的な変動は、日周的な垂直移動に起因する可能性が高いと言える。このことは、化石有殻頭足類の古生態の解明に微量元素分析が有効な手段となる可能性が高いことを意味する。 本研究では、北海道産白亜紀アンモナイトの殼中の微量元素分析を試みたが、殻の続成作用による変質の影響が大きく、分析結果から古生態を検討するには至らなかった。化石試料の微量元素分析を行うためには、化石化過程での各微量元素の挙動について十分解明する必要がある。 現生オウムガイの微量元素分析の結果から、周期的な変動を検出するには最低でも5〜10μごとの分析が必要であることが分かった。この精度での酸素同位体比分析は現在の技術では極めて困難である。微量元素分析は化石有殻頭足類の古生態の解明に有効な手段となる可能性が高いと思われるが、化石化過程での各微量元素の挙動について十分解明する必要がある。
|