1997 Fiscal Year Annual Research Report
マントルでのクラック発生機構とメルト分離メカニズムの解析
Project/Area Number |
09740390
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 奈津子 千葉大学, 理学部, 助手 (50261897)
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Keywords | マントル / メルト発生率 / メルト分離 / メルト包有物 |
Research Abstract |
マントルでのクラックの発生機構とメルト分離メカニズムを明らかにするためかつてのマントルダイアピルの断片である北海道日高帯の幌満岩体(ダイアピルの縁辺部にあたる低温部〜内側の高温部)とニカンベツ岩体(中心に近いより高温部)の野外地質調査ならびに採取した岩石試料を室内で分析等の検討を行った。幌満岩体の中温部(950〜1000°C)に産する始源的マントル物質の組成を有するレールゾライトには、単斜輝石ポ-フィロクラストのコア部分にホストの単斜輝石から離溶した斜方輝石ラメラに伴って、SiO_2-Al_2O_3-Na_2Oに富むガラス+角閃石±石英の混合包有物(数十ミクロンサイズ)が観察される。これらの包有物は初生的に形成されたものであり、電子顕微鏡での観察やCMAデータを用いた画像解析から得られたモード組成とEPMA分析による各鉱物の化学組成から求めたバルク組成の特徴からホストのレールゾライトがごく少量部分溶融して(メルト発生率≧0.8%)生成したメルトがトラップされたものと結論づけられ、発生したメルトは非常にSiO_2-Al_2O_3に富む安山岩質なものであったと結論づけられる。一方、より高温部にあたる厚さ1000mのニカンベツ岩体は、岩体の南側(見かけ上下位)から北側(見かけ上上位)に向かって連続的に(1)部分溶融メルトからの生成物である斜長石の粒経が増加すること、(2)斜長石が輝石の多い部分に不均質に分布していた組織から岩石全体に普遍的に均質に分布する組織へと変化すること、がわかった。このことから、岩体の南から北側に向かって部分溶融の程度すなわちメルトの発生率が増加したことが示唆される。また、ある特定の領域(数十cm〜数m)に集中して発生したメルトが小規模(数cm〜数十cmサイズ)に分離集積した斜長石に富む脈が認められるが、これらの脈はメルト発生率約5%以上のレールゾライト中にのみ産することがわかった。
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