Research Abstract |
小笠原諸島父島の円縁湾累層,旭山累層,三日月山累層から採集されたボニナイト7試料,安山岩4試料、デイサイト3試料,および母島の東崎湾層,元地層から採集された玄武岩3試料,安山岩10試料について薄片記載と全岩主成分元素組成,微量元素組成(Rb,Ba,B,Nb,K,Pb,Sr,Be,Zr,Ti,Li,Y)の分析を行った.また,父島の試料についてはB同位体比の測定も併せて行った.その結果得られた知見は以下の通りである. 1. スラブ起源のフルイドに汚染される前のマントルの微量元素組成は父島と母島とでは異なっており,母島ではMORB的であるが,父島ではZr,Ti,Y含有率が低いにもかかわらすZr/Yが高いやや特殊なものであったと考えられる. 2. 父島,母島の火山岩の微量元素組成は,成熟した海洋性島弧である伊豆弧のスラブ深度が最も浅い場所,やや深い場所の火山岩の組成とそれぞれ共通した特徴を持っている.特に,B/Nb,Pb/Beについては父島の火山岩は伊豆弧のスラブ深度175km以下のものと,母島の火山岩は伊豆弧のスラブ深度175〜190kmのものと非常によく似た値を示す.このことは,父島のマグマが母島のものに比べ,よりスラブ深度が小さい場所で形成されたことを示すと考えられる. 3. 父島のボニナイトのB同位体比(δ^<11>B値)とNb/Bから見積もられたスラブ起源のフルイド端成分のδ^<11>B値は+1.8‰である.この値から,ボニナイトマグマの形成に寄与したフルイドの起源物質は約90%の変質玄武岩起源と約10%の堆積物から構成されていたと推測される.成熟した島弧の場合(変質玄武岩>95%,堆積物<5%)に比べて堆積物起源のフルイドの寄与が大きいことは,島弧形成初期段階におけるスラブ深度の小さい場所での脱水過程においては堆積物の果たす役割が大きいことを示しているのかもしれない.
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