1997 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外偏光顕微分光法を用いた高圧下での“水"の研究
Project/Area Number |
09740400
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
篠田 圭司 大阪市立大学, 理学部, 講師 (40221296)
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Keywords | 近赤外顕微分光 / ダイヤモンドアンビル / OH基赤外吸収 / ポートランダイト |
Research Abstract |
申請者は高圧下における鉱物中のプロトンの挙動という観点から、近赤外顕微分光器を製作し、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下での近赤外吸収スペクトルその場測定に応用を試みた。高圧下における鉱物中のOH状態の研究には一般的に3ミクロン赤外域のOH伸縮振動による吸収帯が注目されが、含水鉱物の3ミクロン領域における赤外吸光度は非常に強く、しばしば赤外分光器の検出限界を超えるため、非常に薄い試料が要求され試料作製に困難を伴うことが多い。このような試料においては近赤外域の倍音の吸収も強く、通常の厚さの薄片においても近赤外域に適度の吸収が観察される。また、OH化学種の判定にはOH伸縮域の吸収のみならず、波数5200,7000cm-1領域のOH伸縮+H2O変角振動の結合音、OH伸縮の倍音による吸収に注目することにより、OH化学種の同定に用いることがある。このように近赤外吸収スペクトルも鉱物中のOH化学種同定に重要な情報を提供すると考えられる。 近赤外分光器はロックインアンプ・チョッパーを用いたロックイン方式による。その構成は、以下の通り。(1)光源及び集光系。(2)偏光顕微鏡(視野制限用アパ-チャ、鏡筒透過光光路を90度曲げるための45度反射鏡及び集光レンズを、顕微鏡鏡頭部に設置改造したもの)。(3)周波数可変チョッパー。(4)近赤外(近赤外光検出器はPbS検出器)。(5)ロックインアンプ、制御用パソコン及びパソコン制御による波長駆動装置からなる。 ポートランダイト(Ca(OH)2)は、近赤外域7070cm-1にOH伸縮振動の倍音による吸収ピークをもち、高圧下(4GPa)ではこの吸収ピークの消失が確認された。ポートランダイトは10PGaを超える圧力範囲で非晶質化を起こすと言われているが、今回の近赤外吸収スペクトル高圧下その場測定によると、非晶質化相転移を起こす前の低圧化における状態変化を示唆する。
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