1997 Fiscal Year Annual Research Report
低速イオンとファンデルワークス薄膜固体の衝突反応に関する基礎的研究
Project/Area Number |
09740422
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
佐藤 哲也 山梨大学, 工学部, 助手 (60252011)
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Keywords | ファンデルワークス薄膜 / 低速イオン / イオン衝撃 / 二次イオン / リフレクトロン / 脱離 / 衝突反応 |
Research Abstract |
12KのSi(100)基板上に希ガス薄膜(Ar,Kr,Xe)、窒素薄膜等を形成し、He^+およびNe^+によるイオン衝撃(0〜数100eV)を行った。二次イオン信号強度の基板温度、膜厚、および衝突エネルギー依存性等の測定から、1)薄膜中におけるホールやエキシトンの生成と拡散、消滅の過程、2)スパイク領域におけるイオン-分子反応、及び正イオン-電子再結合反応、3)二次イオン収率と全脱離収率、などを詳細に調べ、低速イオンと中性クラスターの衝突相互作用における多体効果を検討した。 超高真空槽(6×10^<-11>Torr)内に設置したリフレクトロンのイオン反射鏡の終端電極をSi(100)基板とし、これをHeガス循環型極低温冷凍機により冷却(7〜300K可変)する。反射電場を制御することにより基板に衝突する一次イオンの運動エネルギーを0〜数keVの範囲で制御した。 Ar原子とN_2分子薄膜の、緩和過程の違いや、基板の影響を調べるために、N_2及びArの多層膜を試料として、He^+イオンを400eVで衝撃した。15KのSi基板上にAr薄膜を蒸着した場合には、下層からのAr^+は、N_2の膜厚と共に急激に減少し、5ML以上では観測されなくなった。逆にN_2薄膜を下層としAr薄膜を蒸着していった場合には、下層膜由来の、N^+,N_2^+,N_3^+はAr膜厚を20MLまで増加させても、観測された。これらの結果は、入射イオンの運動エネルギーの緩和過程に、大きなマトリックス依存性があることを示唆しており、振動及び回転の内部自由度をもつ窒素分子が形成するマトリックスは、これをもたないArマトリックスに比べて、はるかに効率よく入射イオンの運動エネルギーを薄膜の表面近傍で緩和することが分かった。
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