1997 Fiscal Year Annual Research Report
経路積分セントロイド分子動力学計算による固体・液体水素の量子ダイナミクスの研究
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09740433
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
衣川 健一 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (50254446)
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Keywords | 経路積分セントロイド / 分子動力学シミュレーション / パラ水素 / 固体水素 / 液体水素 / 量子ダイナミクス |
Research Abstract |
径路積分セントロイド分子動力学(CMD)シミュレーションの運動方程式(定温定圧MD法)、数値積分アルゴリズム、およびそのCMDシミュレーションのためのプログラムを開発した。さらに、リチウム原子1個をドープしたパラ水素スラブ(厚板)(2.5〜14.7K)、およびバルクの液体パラ水素(14.7K)に対してCMDシミュレーションを行い、分子の実時間ダイナミクスを調べた。スラブすなわち表面を持つ固体のシミュレーション計算では、リチウム原子を1個ドープした欠陥の配置によってリチウム原子が表面に出てくる条件を調べた。そのためには、リチウム原子から表面に至る経路のパラ水素分子が予め取り除かれていること、さらにスラブ全体が融解していることが必要であることがわかった。さらに融解した層中では分子は2次元的拡散を呈していることも明らかとなった。また一方、液体パラ水素のCMDシミュレーションでは系の集団運動、すなわち量子液体の時空相関を動的構造因子を計算することによって調べた。計算されたパラ水素の自己拡散係数は実験値によく一致した。また、動的構造因子のスペクトルには、散乱ベクトル長の小さい領域で音響様のモードが出現し、また散乱ベクトル長の増加に伴って高振動数にピークがシフトすることが観察された。また、このフォノン分散から評価された音速は1781ms^<-1>であり、実測値1353ms^<-1>とよく一致した。これはCMDシミュレーションで量子液体の集団的ダイナミクスがよく再現されたことの証拠である。また静的構造因子にピークが現れる散乱ベクトル長では、動的構造因子の音響様モードが消失しほぼゼロ振動数にのみ分布が現れた。これはドジャンのナロ-イングが量子液体でも起こっていることの証左である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.Kinugawa: "Centroid path integral molecular dynamics simulation of lithium para-hydrogen clusters" Journal of Chemical Physics. 106(3). 1154-1169 (1997)
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[Publications] 衣川 健一: "径路積分セントロイド分子動力学法について〜新しい量子多体系実時間シミュレーションの方法論と応用" 物性研究. 68(4). 455-475 (1997)