1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740440
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
藤原 久志 広島市立大学, 情報科学部, 助手 (40264949)
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Keywords | 繰り返し多光子吸収 / 芳香族分子 / レーザー爆蝕 / パルス分子線 / ホット分子 / 第3チャンネル |
Research Abstract |
高分子中の芳香族分子は、ナノ秒紫外レーザーパルス幅内で、平均して1個あたり10個以上もの光子を吸収可能である(繰り返し多光子吸収)。その機構について、「繰り返し多光子吸収を行う振電状態は、振動励起された基底状態である」という申請者が提出した仮説を実証することを目的として、気相(分子線)、凝縮相で並行して実験を行った。 (1) 極低温の孤立状態ナフタレン・アントラセンを生成するパルス分子線源を作製し、色素レーザーおよび検出系(光電子増倍管、分光器、キセノンランプ、ボックスカー積分器より構成)を用いて、振動励起電子基底状態(S_<0,VE>)の生成・検出を試みた。具体的には、電子基底状態分子(S_0)を、1番目のレーザーパルスでS_1のゼロ振動準位に励起し、2番目のパルスによる誘導放出を利用してS_0の光学活性な振動準位に遷移させてS_<0,VE>を生成し、その吸収スペクトルの測定を試みた。しかし、S_<0,VE>の生成濃度が低いため、有意な吸収スペクトルは得られておらず、この点を改良すべく実験装置を再構成中である。将来的には、この実験で得られたスペクトルを参照し、高分子中の繰り返し多光子吸収中の芳香族分子について、S_<0,VE>の検出を試みる予定である。 (2) 芳香族分子としてビフェニルを含む高分子フィルムに対し、温度を変えてビフェニルのT_1状態の過渡吸収測定を行った。温度上昇と共にビフェニルのT_1吸収の減衰は速くなり、またこの減衰の速度定数(2次)と温度の関係を示す較正曲線を得た。この較正曲線を、繰り返し多光子吸収中の芳香族分子のT_1吸収の減衰に適用したところ、高分子フィルムの温度がナノ秒パルス幅のオーダーで急速に上昇していることが明らかとなった。この成果を、平成10年7月にスペインで開催されたIUPAC光化学会議で発表した。さらに、今後報文としてまとめて、学術雑誌に投稿する予定である。
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[Publications] Hisashi Fujiwara: "Dynamics of excited and ionic states of N,N,N',N'-tetramethyl-p-phenylenediomine in poly methyl methacrylatel under ablation condition" Research on Chemical Intermediates. 24巻8号. 879-892 (1998)