1997 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族分子の2量体イオンの幾何構造が分子間の電荷共鳴相互作用に及ぼす影響
Project/Area Number |
09740450
|
Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
大橋 和彦 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (80213825)
|
Keywords | ベンゼン / クラスターイオン / 赤外光解離分光 / 振動スペクトル |
Research Abstract |
今年度は、ベンゼンクラスターイオンの振動スペクトルの測定を試みた。電子衝撃型イオン源/四重極マスフイルター/八極子イオンビームガイド/四重極マスフィルターからなる光解離分光装置を用いた。2量体イオンは結合エネルギーが大きく、赤外光の一光子吸収では解離しない。そこで、実験手法の確立と装置の調整の目的を含めて、一光子吸収で解離する3量体イオンについて、赤外光解離スペクトル(2900-3100cm^<-1>)の測定を行った。(C_6H_6)_3^+に加えて(C_6H_6)_2(C_6D_6)^+,(C_6H_6)(C_6D_6)_2^+,(C_6D_6)_3^+についても測定を行った。 (C_6H_6)_3^+は2986および3047cm^<-1>に吸収極大を示した。(C_6D_6)_3^+がこの領域に吸収を示さないことから、これらの吸収帯がC-H結合部分に起因することを確認した。3量体イオンの構造は、2量体イオン核をもつ3重サンドイッチである。2986cm^<-1>の吸収帯を、2量体イオン核を構成しているベンゼン分子のC-H伸縮振動、また、3047cm^<-1>の吸収帯を、イオン核外にある第3のベンゼン分子のC-H伸縮振動と帰属した。混合3量体イオンである(C_6H_6)(C_6D_6)_2^+は、(C_6H_6)(C_6D_6)^+と(C_6D_6)_2^+の2種類の光解離生成物を与える。(C_6D_6)_2^+を検出して得た光解離スペクトルが単一の成分(2980cm^<-1>)からなるのに対して、(C_6H_6)_2(C_6D_6)^+を検出して得た光解離スペクトルは2つの成分(2950および2980cm^<-1>)からなる。これらの2つの成分を、光吸収に関与するC_6H_6分子が3重サンドイッチのそれぞれ中央、および、端に位置する2つの異性体による吸収帯であると帰属した。 今後は、多光子吸収を利用して、2量体イオンの振動スペクトル(赤外光解離スペクトル)の測定を行う。
|