1997 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍性ギルボカルシン類の高効率合成法と高機能化への分子設計
Project/Area Number |
09740467
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
細谷 孝充 岐阜大学, 工学部, 助手 (60273124)
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Keywords | 抗腫瘍性抗生物質 / ギルボカルシン / アリールC-グリコシド |
Research Abstract |
本研究者はすでに、前周期遷移金属をルイス酸として活用する位置および立体選択的なアリールC-グリコシド結合の形成反応を用いて、特異な構造を有するアリールC-グリコシド型抗生物質ギルボカルシン類の高効率合成法の開発に成功している。今回、ギルボカルシン類の抗腫瘍活性能の強化および選択性の向上に向けた分子設計を展開するにあたり、まず、抗癌性薬物においてしばしば問題となる薬剤耐性の克服に向けた基礎的研究を手がけた。一般的に薬物は生体内に入ると異物として認識され、肝臓などにおいて代謝反応を受けて解毒されてしまう。この解毒機構を担っているのが通常では異物の排泄を行っている有機アニオントランスポーターであるMRP/GS-XやcMOATと呼ばれる排出ポンプであり、肝臓では主にcMOATが発現している。cMOATはグルタチオンやグルクロン酸の抱合体を認識し、これを選択的に細胞外へと排出する性質を有している。そこで本研究では、cMOATに選択的な阻害剤を開発し、それと薬物との併用による抗腫瘍活性能をはじめとする薬物活性の向上を目指した。具体的には、cMOATの選択的阻害剤としていくつかのグルクロン酸抱合体を設計し、その合成を試みた。これまでに報告されているグルクロン酸抱合体の合成法を実際に試みた結果、いずれの方法も今回設計した化合物の合成には不適切であることが判明した。そこで、あらためて検討を行った結果、高収率、かつ高立体選択的なグルクロン酸抱合体の高効率合成法の開発に成功した。今後は、本法の活用により各種グルクロン酸抱合体を合成し、それらのcMOAT阻害活性評価実験を行うとともに、それらとギルボカシン類やその誘導体をはじめとする薬物との併用による抗腫瘍活性能の向上に向けた研究を展開していく予定である。
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