1997 Fiscal Year Annual Research Report
配位子の電子的効果によるルテニウム錯体の酸化反応性制御と分子認識錯体触媒の創製
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09740495
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小島 隆彦 九州大学, 理学部, 助手 (20264012)
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Keywords | ルテニウム錯体 / ピリジルアミン配位子 / 配位子の電子的効果 / 基質酸化反応 / 分子認識 |
Research Abstract |
今年度の成果として、本研究の基礎となる配位子である新規Tris(2-pyridylmethyl)amine(TPA)誘導体の合成及びそれらを有するルテニウム錯体の合成に成功した。 まずルテニウム錯体の酸化反応性制御のための電子的効果を検証するための配位子の合成に関しては、電子供与基であるメトキシ基を2つのピリジン環の5-位に有するBis(5-methoxy-2-pyridylmethyl)(2-pyridylmethyl)amine(5-MeO_2-TPA)及び電子吸引基であるニトロ基を2つのピリジン環の4-位に有するBis(4-nitro-2-pyridylmethyl)(2-pyridylmethyl)amine((4-NO_2)_2-TPA)を合成した。さらにRu(III)単核錯体である[RuCl_2(5-MeO_2-TPA)]ClO_4を合成した。 分子認識錯体触媒を構成する配位子の合成にも成功した。すなわち、TPAの2つのピリジン環の6-位に1-ナフトイル基を有する配位子(1-Naph_2-TPA)と、そこに2-ナフトイル基を有するもの(2-Naph_2-TPA)の2種類の新規TPA誘導体を合成した。2-Naph_2-TPAについては、ビスクロロ架橋Ru(II)2核錯体1、まったく同じ構造を有するRu(III)2核錯体2の合成に成功した。興味深いことに錯体1は1-ナフトエ酸メチルを1分子包接しているのに対し、錯体2はナフトエ酸誘導体を包接していないことが明らかとなった。また、錯体2のNMRスペクトル及び磁化率の測定から、2核ルテニウム中心がかなり強く反強磁性的相互作用しており、弱い金属-金属結合の存在が示唆された。このことは錯体の分子認識能力がその酸化状態によって異なるというこれまでにない金属錯体特有の分子認識素子となることを示すものである。
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[Publications] 小島隆彦: "The first crystal structure determination of biphosphole-transition-metal complex: crystal structure of square-planer meso-[Pd(3,3′,4,4′-tetramethyl-1,1′-diphenyl-2,2′-biphosphole)_2][BF_4]_2" Chemical Communications. 1679-1680 (1997)