1997 Fiscal Year Annual Research Report
物理吸着分子のレーザー誘起振動脱離機構の定量的理論解析
Project/Area Number |
09740511
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大槻 幸義 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40203848)
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Keywords | 物理吸着分子 / レーザー誘起振動脱離 / 振動断熱近似 / 化学反応レーザー制御 |
Research Abstract |
本課題は,NaCl(100)面に物理吸着したCO分子のIRレーザー誘起振動前期脱離過程を定量的に理論解析し,その結果を基に脱離の促進ひいては表面加工に対する知見を得ることを目的にしている.CO分子内振動・CO-表面伸縮振動を考慮した2次元計算では,実験結果を再現するために,従来いわれてきた吸着ポテンシャルよりもやや広がったモ-スポテンシャルを仮定しなければならなかった.この原因として,申請者は「2次元モデルを使ったために,1自由度あたりのゼロ点エネルギーが実際よりも高かったためである」と推測ている.そこで,今年度は,申請のワークステーションでCO-表面変角振動も加えた3次元量子力学シミュレーションを行い,従来,「変角振動は脱離を加速させる」という半ば定説化している考えについて再考察を行っている.現在,科研費により購入したワークステーションを使って数値計算プログラムを開発中である.今年度,特に成果が上がったのは,脱離の高効率化を目指した,化学反応レーザー制御の最適制御問題としての定式化である.この理論形式が持つ非線形性に起因した困難を取り除くため,微小時間に逐次,最適制御法を適用することで,線形化(局所)制御法の定式化に成功した(投稿準備中).まだ,モデル系への適用段階だが,結果の一部は雑誌Chemical Physics Lettersに受理された.今後,「高振動のCO伸縮振動がつくる断熱ポテンシャル上を低振動(吸着振動)の波束が運動する」という,実時間ダイナミクスとしての観点からもCO/NaCl系の理解を深めていく予定である.
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