1998 Fiscal Year Annual Research Report
物理吸着分子のレーザー誘起振動脱離機構の定量的理論解析
Project/Area Number |
09740511
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大槻 幸義 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40203848)
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Keywords | 物理吸着分子 / レーザー誘起振動脱離 / 振動断熱近似 / マスター方程式 / 化学反応レーザー制御 / 最適制御法 / 局所最適化法 |
Research Abstract |
CO分子内振動・CO-表面伸縮振動にCO-表面変角振動を加えた3次元モデルにより,量子力学シミュレーションを行った.2次元モデルと比較し,3次元モデルではCO-表面振動断熱ポテンシャルが2次元となるために単位エネルギーあたりの状態数が増加することを確認した.これに基づき,CO分子内振動の赤外吸収スペクトル線幅の温度依存性を定量的に解析するためには,不均一拡がり機構を考慮することが不可欠であることを明らかにした.一方,脱離の高効率化のための化学反応レーザー制御法の開発においては,最適制御理論に基づく局所制御法の定式化に成功した.即ち,目的の状態を表す汎関数において汎関数空間内の"経路"を仮定すれば,この経路に対するトラッキング問題として局所的に制御電場を設計できることを理論的に示した.また,非定常状態を制御する電場の設計に際して生じる困難を,時間逆向きにシュレーディンガー方程式を解くことで回避できることを理論及び数値計算を通して明らかにした.更に,最適制御法へも研究を進め,密度行列形式で最適制御理論を展開し,高速の数値計算アルゴリズムの開発にも成功した.このアルゴリズムは電場の2乗で単調に収束することを保証し,その有効性は数準位モデルを使い数値的にも確かめられた.ここでの計算は,緩和機構および初期熱分布の効果を同時に陽に考慮した最初の最適制御理論計算である.以上の反応制御理論に関する成果は,雑誌The Journal of Chemical Physicsに掲載および掲載予定である.これら一般論の成果を踏まえ,現在,投稿中ではあるが,局所制御法の応用として,前期脱離反応に類似の前期解離反応に着目し制御レーザー場の設計も行った.具体的には,Nalの前期解離反応を促進させるコントロールパルスを数値的に求め,単一パルス内でのポンプ-ダンプ励起過程が有効であることを理論的に明らかにした.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Ohtsuki,H.Kono and Y.Fujimura: "Quantum control of nuclear wave packets by locally designed optimal pulses" The Journal of Chemical Physics. 109巻21号. 9318-9331 (1998)
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[Publications] Y.Ohtsuki,W.Zhu and H.Rabitz: "A monotonically convergent algorithm for quantum control with dissipation" The Journal of Chemical Physics. (印刷中). (1999)