1997 Fiscal Year Annual Research Report
金属カルコゲン化物の新規合成法により生成するナノ粒子と電気物性
Project/Area Number |
09740518
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
成毛 治朗 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (40237623)
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Keywords | 金属カルコゲン化物 / 金属オチガレート / 熱分解 / 希土類蛍光体 / 青色蛍光体 / フォノンカップリング |
Research Abstract |
本研究は、金属カルコゲン化物の新規合成法を検討し、その結果生成する特殊構造をもつ物質、あるいは優れた特性を有する材料の創製を目的としている。本年度は特に金属カルコゲン化物合成の前駆体となりうる希土類(Ln)-硫黄(S)結合を持つ錯体を新規合成した。それらの構造と発光特性を調べることにより、これまでほとんど知られていないLn-S結合の光物性的特徴について検討した。またこれら錯体を原料として熱分解反応を行い、熱安定性の高い青色蛍光体として最近注目されている希土類ドープ金属チオガレート蛍光体を合成し、その発光特性を評価した。 Ln-S結合をもつ錯体として[PPh_4][Eu{S_2P(OEt)_2}_4],Na[Eu(S_2(NMe_2)_4].4H_2O,[NMe_4][Eu(SCOEt)_4]などを合成しX線構造解析を行った。いずれの化合物もEuの周囲には8個のS原子が十二面体型に配位し、配位子場はD_<2d>対称に近似された。4〜300Kで発光特性を調べた。いずれの化合物も紫外光照射により低温でEu^<3+>のf→f遷移による発光が見られた。発光強度は温度上昇と共に著しく減少し、強い温度依存性をもつ何らかの失活過程の存在が明らかとなった。励起スペクトルは4f軌道間遷移による鋭いバンドとS→EuLMCTによる幅広いバンドからなる。特に注目すべき事は発光・励起スペクトルに見られるそれぞれ^5D_0→^7F_0,^7F_0→^5D_0の遷移には多数のサイドバンドが存在することである。^5D_0→^7F_0,^7F_0→^5D_0遷移とサイドバンドとのエネルギー差はS_2P(OEt)_2,S_2CNMe_2,SCOEt配位子のIRスペクトルとよく一致した。このことから配位子の振動レベルが^5D_0状態とフォノンカップリングしたものと考えられる。これらのフォノンサイドバンドの強度はO原子を配位子とした場合に比べて異常に強く、重原子であるSを配位子とした場合に特徴的に現われることが明確となった。 次に今回得られた錯体の一つである[NMe_4][M(S_2CNMe_2)_4]、およびMH_2(M=Ca^<2+>,Sr^<2+>,Ba^<2+>),Ca[S_2CNMe_2]_3S単体の混合物を熱分解することにより、一段階で金属チオガレート青色蛍光体を合成できることを見いだし、熱分解条件、組成等が最適化された。この結果得られた蛍光体は商品化されているSilvania製青色蛍光体をしのぐ高い発光強度が実現した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Kobayashi: "Photoluminescence and Molecular Structure of Tetrakis (N,N-dimethyldithiocarbamato) europate (III)" Chem.Lett.907-908 (1997)
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[Publications] H.Naruke: "Crystal Structure of K_<18.5>H_<1.5>[Ce_3(CO_3)(SbW_9O_<33>)(W_5O_<18>)_3]・14H_2O" J.Alloys and Comp.(印刷中). (1997)
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[Publications] H.Naruke: "Crystal Structure of neodymium(III)-diethylene glyco complex" J.Alloys and Comp.261巻. 140-144 (1997)
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[Publications] K.Kawkegawa: "Objective Determination of the Compositional Fluctuation of Pb(Zr,Ti)O_3 and the Effect of Anisotropy in the Same on the Determinatio" J.Mat.Sci.Lett.16巻. 512-515 (1997)
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[Publications] H.Naruke: "Structure of dialuminiohexalutetiopentakis (hexaniobate) : comparis with europium and erbium analogues." J.Alloys and Comp.255巻. 183-189 (1997)