1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740537
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小堀 康博 東北大学, 反応化学研究所, 助手 (00282038)
|
Keywords | 時間分解発光測定法 / 過渡吸収測定法 / 磁場効果 / エネルギー移動 / ラジカル-三重項対機構 / 交換相互作用 / 零磁場相互作用 / スピン緩和 |
Research Abstract |
レーザー励起による時間分解発光測定、過渡吸収測定を正確な外部磁場存在下(0〜2テスラ)で行い、励起分子-ラジカル系の外部磁場による反応制御を検討した。得られた成果を概略する。 アルコール溶媒中ベンゾフェノンへのレーザー照射により、ベンゾフェノンケチルラジカル(BPK)が生成し、ナフタレン(NP)存在下では、競争的にNP励起三重項状態が生成する。この三重項状態とラジカル間のエネルギー移動反応を、ナノ秒時間分解蛍光測定法により外部磁場を変化させながら測定した。この反応により観測されるBPKの蛍光強度は、50ミリテスラ付近で増加し外部磁場により反応が促進され、0.2から2テスラでは次第に蛍光強度が減少し、この反応が制御された。この磁場効果は、溶媒の粘土や励起三重項種を変化させることによっても変化した。得られた結果は、過渡的なラジカル-三重項対の状態間の相互作用を考慮することで説明することができた。ラジカル-三重項対の二重項と四重項状態は交換相互作用によってエネルギーが分裂している。また、これらの状態間では三重項分子の零磁場相互作用によるスピン緩和の機構によって速い状態混合が起こる。二重項、四重項それぞれのスピン副準位は外部磁場によりゼーマン分裂するため、二重項、四重項間のスピン緩和速度が変化する。低磁場領域では、交換相互作用で分裂していた2つの状態が縮重するため、四重項から二重項状態への混合が促進され、さらに高磁場にするとスピン副準位がさらに大きくエネルギー分裂していくため状態混合が大きく制御される、という機構で説明された。また、過渡吸収法により、安定ラジカルによる励起三重項消光速度を外部磁場存在下で測定し、高磁場で三重項-ラジカル間エネルギー移動反応が制御されることが確認され、励起分子-ラジカル系の外部磁場による反応制御が可能であることが示された。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] S.Sekiguchi: "Marcus Free Energy Dependence on the Sign of Exchange Interaction in Radical Ion Pairs Generated by Photoinduced Electron Transfer Reactions" J.Am.Chem.Soc.120. 1325-1326 (1998)
-
[Publications] A.Kawai: "CIDEP in Radical-Singlet Molecular Oxygen System" Appl.Magn.Res.12. 405-410 (1997)