1997 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒を用いる触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応の開発
Project/Area Number |
09740539
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 正治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (00282723)
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Keywords | 鉄触媒 / 不斉炭素-炭素結合生成反応 / 有機マグネシウム試薬 / 有機亜鉛試薬 / カルボメタル化反応 / エナンチオ選択的 / オレフィン |
Research Abstract |
本研究は鉄触媒による触媒的不斉カルボメタル化反応の開発を行うことを目的とする.研究期間中に低原子価有機鉄活性種の反応制御に有効な配位子を見い出し,さらに効果的な不斉誘起を可能とする不斉配位子の探索を行う.ここで得られる低原子価の有機鉄に関する錯体化学及び配位化学的な知見を基にした効率的物質変換法へ応用の足掛かりを得る. 本年度は,鉄を触媒とするカルボメタル化反応の可能性を見い出すべく,シクルプロペノンアセタールをオレフィン基質とした検討を行った.検討の結果,種々のグリニャ-ル試薬が触媒量の塩化鉄(III)の添加でシクロプロペンに対して穏やかな条件の下,付加することが判明した.生成物のシクロプロピルマグネシウム試薬の炭素求電子剤による捕捉を試みたところ,ほぼ完全なシス選択的をもって2段階めの炭素-炭素結合生成反応が起き,シス二置換シクロプロパノンアセタールが良好な収率で得られた(投稿準備中).また有機亜鉛試薬類の付加反応を検討した結果,グリニャ-ル試薬と同様に速やかにカルボメタル化反応が進行することが判明した.現段階においては,これらの触媒的カルボメタル化反応の成功の鍵は還元条件下の系中で生成した低原子価の有機鉄活性種であると考えている.不斉触媒化を目指して光学活性配位子を種々検討したところDIOP,BINAPなどのホスフィン系のキレート配位子を用いた場合に低選択性ながらも不斉誘起が観測できた.この知見を基に次年度は選択性の向上等,反応条件の最適化に努めるとともに,この鉄触媒反応系の応用範囲の探索を行う予定である.選択性の向上に関しては遷移構造の情報が必須であることから分子軌道計算を用いた理論研究を平行して行う.ここで得られるカルボメタル化反応の遷移構造を基に,より効果的な不斉配位子の設計・合成が可能となると考えている.
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