1997 Fiscal Year Annual Research Report
二核ロジウム錯体による触媒的炭素-炭素結合生成反応のメカニズム解明
Project/Area Number |
09740543
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
金子 雄一 高知大学, 理学部, 助手 (00243816)
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Keywords | 二量化反応 / アクリル酸エステル / 触媒反応 / ロジウム錯体 |
Research Abstract |
アクリル酸エステルの二量化反応の触媒となる二核ロジウム錯体[(RhCp^*)_2(μ-CH_2)_2(CH_3CN)_2](BF_4)_2(1、Cp^*=η^5-C_5Me_5)は分子内に2つの架橋メチレン配位子を持つことに構造上の特徴を持つ。架橋メチレン配位子の水素原子による効果(α-アゴスティック効果)について検討した。メチレン配位子が重水素化された錯体〔{C_5CD_3)_5Rh(μ-CD_2)}_2(CH_3CN_3)_2](BF_4)_2(1-d_<34>)を合成し、これを用いて触媒反応を行った。錯体1-d_<34>を用いた触媒反応から得られたアクリル酸エチルの二量体のNMRスペクトルの測定の結果、検出可能な範囲内での生成物への重水素の取り込みは確認されなかった。 また、触媒反応失活後に得られる錯体の単離構造決定を試みた。2種類の二核錯体が得られ、その構造をそれぞれ、[(Cp^*Rh)_2(μ-CH_2)(μ-η^1:η^2:η^2-CHCHCOOEt)](BF_4)(2)と[(Cp^*Rh)_2(μ-η^1:η^3:η^2-CHCHCHCOOEt)(μ-H)](BF_4)(3)と決定した。錯体2はアクリル酸エステルの錯体への酸化的付加によって生成すると考えられる。錯体3は2の異性化生成物であった。 以上の結果から、錯体1によるアクリル酸エステルの二量化反応の機構を推定した。反応の不活性化に伴って得られる二核錯体2、3が触媒サイクルから脱落することにより生成すると考えるならば、触媒反応の最初の過程はアクリル酸エステルの二核錯体への酸化的付加であると考えられる。触媒反応は2分子のアクリル酸エステルの二核ロジウム錯体への配位により開始する。アクリル酸エステルの酸化的付加によりビニル-ヒドリド二核ロジウム錯体が形成する。さらに炭素-炭素結合、有機配位子とヒドリドの還元的脱離によって触媒サイクルが成立する。
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