1997 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ成虫原基におけるパターン形成機構の研究
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09740564
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常泉 和秀 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (40280953)
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Keywords | daughters against dpp / Mothers against dpp / morphogen / Drosophila / decapentaplegic / pattem formation / negative feedback |
Research Abstract |
我々はキイロショウジョウバエの翅をモデル系として形態形成機構を調べている。翅パターン形成ではTGF-β familyに属するシグナル分子decapentaplegic(dpp)が重要な役割を担うことが知られている。そのメカニズムを調べるため、dppにより誘導される新規遺伝子dad(daughters against dpp)を単離した。DADはC末に、DPPの細胞内シグナル伝達因子であるMothers against dpp(MAD)のC末と弱い相同性を持つ。dadの機能を調べるため異所性発現系を用い、構成的に活性化されたDPP受容体thick veins(tkv^<Q253D>)およびMadと比較検討した。DPPシグナルを亢進するtkv^<Q253D>やMadでは成虫翅が前後軸方向に伸長するのに対し、dadでは極端な場合翅が欠失する。tkv^<Q253D>とdadおよびMadとdadを共発現させると正常翅様の翅が観察され互いの表現型が抑圧される。DPPターゲットとして知られるoptomotor-blind(omb)の発現制御への効果では、Madを過剰発現するクローンでは細胞自立的なombの転写上昇が、dadを過剰発現するクローンでは転写抑制が、両者を過剰発現するクローンでは通常レベルの発現が観察される。更にdadの変異クローンでは細胞自立的なombの転写上昇が観察される。以上の結果から、DPPシグナルにより誘導されるdadは、細胞自立的にそのシグナルを抑制する事が明らかにされた。このことはDPPシグナル伝達機構に負のフィードバック制御が含まれていることを示している。翅辺緑の感覚毛を指標とした実験において、dad変異を持つクローンではDPPに対する応答の閾値が正常細胞に比べて低く設定されていることが示され、dadの抑制作用が翅パターン形成に重要な役割を担うことが示唆された。
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