1998 Fiscal Year Annual Research Report
二枚貝とヒドロゾアの相互作用の可塑性に関する実験生態学的・個体群統計学的研究
Project/Area Number |
09740577
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仲岡 雅裕 東京大学, 海洋研究所, 助手 (90260520)
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Keywords | 生態学 / 個体群統計学 / 野外操作実験 / 海産底生生物 / 生物間相互作用 / 成長 / 軟体動物 / 腔腸動物 |
Research Abstract |
本研究は、付着性のヒドロ虫類(カタテニンギョウ)と宿主である二枚貝キララガイについて、両種の相互作用の経時的変化を定量的に評価することを目的とする。今年度の成果は下記の通りである。 1、 野外調査:岩手県大槌湾でキララガイの採集を行い、カタテニンギョウの付着率を計測した。今年度はキララガイの新規加入がなかったため、キララガイの平均サイズは増加した。これに伴いカタテニンギョウの付着率も減少した。この結果は、前年度確認されたカタテニンギョウのサイズ依存的付着率からの予測と一致した。 2、 野外実験:春季にキララガイを標識後埋設し、カタテニンギョウの有無による生長量、生存率の変異を検定した。その結果、カタテニンギョウの有無に伴うキララガイの成長量、生存率に有意な差は見られなかった。この結果は前年度行った夏季、秋季の結果と同じであり、両種の相互作用に著しい季節変異がないことを示している。 3、 室内実験:キララガイの捕食者である十脚類数種には、カタテニンギョウの付着の有無に伴うキララガイへの攻撃率に変異は検出されかった。 4、 個体群統計解析:上記で得られたデータを用い、以下の解析を行った。 (1), キララガイの加入の変動がカタテニンギョウ群集に与える影響:確率論的行列モデルを用いた解析では、キララガイの新規加入の経年変動が大きいほど、両種の共存条件が厳しくなることが判明した。これは前年度解析した決定論的モデルの予測とは異なった。 (2), カタテニンギョウがキララガイに与える影響:行列モデルによる解析の結果、カタテニンギョウが付着したキララガイの適応度の減少は1%以下であった。両者の相互作用は、カタテニンギョウの片利共生と結論された。
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