1997 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化及び生育期間の延長が高山植物の成長特性に及ぼす影響
Project/Area Number |
09740580
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 直也 富山大学, 理学部, 助手 (40272893)
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Keywords | 温暖化 / 高山植物 / 葉の特性 / 種子生産 |
Research Abstract |
高山植物の成長・繁殖に対する温暖化の影響を明らかにするため、人為的に温度を上昇させ、葉の特性や花弁面積・生産種子数の変化を調べた。調査は立山山地の浄土山にある富山大学立山施設(海抜2850m)を中心とする一帯において、1997年6月下旬から10月上旬にかけて行った。本年度は、中部以北の日本の高山帯に普通にみられる落葉性矮小低木チングルマについて調査を行った。1997年の6月下旬に、5枚のアクリル板から成る簡易温暖化箱(オープントップチャンバー:以下OTC)を調査地に設置し、同時に自動温度測定器(データロガー、KADECUII)をOTC内外に設置して温度を測定した。また、調査地に自動光度測定器(データロガー、KADECUP)を設置し、光度の季節的変化も同時に測定した。チングルマのシュートについて、8月1日にOTC内外で非繁殖シュートを各10本と開花シュートの花弁を一枚づつ各10枚、8月23日に非繁殖シュート・繁殖シュートを各8本、及び9月12日に非繁殖シュート・繁殖シュートを各5本採集した。採集後素早く実験室に持ち帰り、各シュートごとに葉面積を測定した後、温度80度で48時間乾燥させ、全葉重量および単位面積当たりの葉の重量(Leaf massper area:以下LMA)を測定した。繁殖シュートについては、花弁面積・花茎長・花茎重・種子数・種子重を測定し、OTC内外の違いを明らかにした。結果を以下に示す。1)OTC効果により7月から10月までの平均で約1-2度、温度が上昇した。2)花弁の面積・花茎長・花茎重はOTC内で有意に増加した。3)葉面積・葉重はOTC内で増加し、またLMAは減少する傾向がみられた。4)種子数・種子重はOTC内で増加した。葉の窒素含有量については現在分析中である。以上の結果より、OTCを用いた人為的温暖化により花や葉の形質が変化し、物質生産性が高まり、その結果種子数や種子重が増加したものと考えられる。来年度は特に花の特性(オシベ・メシベの数と重さ・花弁の面積と重さ)について詳しく調べる予定である。
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