1998 Fiscal Year Annual Research Report
鳥類における種特異的な歌の学習・記憶メカニズム : 鋳型ニューロンの免疫組織化学・電気生理学・行動学的解析
Project/Area Number |
09740624
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
竹内 浩昭 静岡大学, 理学部, 講師 (90216854)
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Keywords | 学習 / 囀り / 鳥 / c-fos / zenk / immediate early gene / 免疫組織化学 / 脳 |
Research Abstract |
(1) モデル歌の学習実験(鋳型形成の標準化) 感覚性臨界期(20〜75日令)のジュウシマツ幼鳥に定型的なモデル歌(同種雄の囀りまたは合成音)を繰り返し提示して、そのモデル歌を「鋳型」とした歌を完成させ、同じ構造の歌を同一時間経過で獲得する鳥を下記のような免疫組織化学実験・電気生理学実験・行動実験に供給することを試みたが、個体によるバラツキが非常に大きく、まだ安定供給体勢は完成できていない。 (2) IEG発現に基づく鋳型ニューロン候補の組織化学的検索 モデル歌あるいは同種他個体の歌をプレイバックした時に特異的発現するc-fosとzenk(immediate early gene,IEGの一種;zenkはegr-1やzif-268のhomologue)を指標として鋳型ニューロンを検索した。その結果、歌制御核HVcとRAでは歌の発声(運動出力)に伴ってc-fosとzenkが誘導され、歌の受容(感覚入力)時には聴覚関連脳部位(NCM,cHV,Field L1,L3,HVc shelf,RA cup,MLD)でzenが誘導されることを見いだした。また、この歌受容時のzenk誘導は、異種の歌やノイズに比べて、同種の歌に対する応答が顕著であり、種の認知や個体識別の関わる可能性が示唆された(Yakura & Takeuchi,1998)。 (3) IEG発現の阻害実験(アンチセンスDNA法の適用) ジュウシマツの歌学習におけるとzenkの役割を調べるために、まずzenk cDNAの塩基配列を5′/3′RACE法により決定した。次に、この塩基配列に基づいてアンチセンスオリゴヌクレオチド(アンチセンスODN)を設計し、脳実質の注入した。FITC標識ODNの注入実験から、少なくとも1週間はODNが細胞内に滞留することがわかったが、ODNが充分に拡散しなかったため、特定脳領域におけるzenk発現抑制の効果は定量的に解析できなかった。今後もアンチセンス実験法の確立を目指す予定である。
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