1997 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の高次視覚機能の神経生理学的研究:視覚認知のニューロン機構
Project/Area Number |
09740628
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡田 二郎 九州大学, 理学部, 助手 (10284481)
|
Keywords | 昆虫 / 視覚 / 神経生理学 |
Research Abstract |
無脊椎動物では形態視や運動視などの明確な視覚機能を有する動物群が限られるため、視覚中枢に関する報告は少ない。本研究は優れた視覚機能を持ち、かつ視覚学習も可能なミツバチを用い、形態識別と認知に関わる神経回路をニューロンレベルで解明することをめざして開始された。しかし初期の実験から、ミツバチは神経生理学的実験に対して弱いことが分かった。神経生理学的実験に十分耐え、かつ単純な視覚刺激により明確な行動が発現する材料について再検討することが、複雑なミツバチの視覚機能を理解するための基礎として必須と判断された。この結果、ゴキブリの逃避行動における陰影反射が適当と考えられ、本年度はこの実験系を用いて研究を進めた。これまでに得られた知見を以下に示す。 1.ゴキブリの逃避行動は風や接触等の刺激で誘発されるが、この行動は陰を提示することで効果的に停止する。 2.逃避行動の陰影反応(陰の提示による走行の停止)は、広い範囲の光条件下(0.01-100ルクス)において、ほぼ一定の確率(70-80%)で起きた。 3.単眼および複眼の除去手術を施した動物を用いた実験から、逃避行動の陰影反応において複眼が必須であること、単眼はおおよそ1ルクス以下の暗条件下で複眼機能を補償するはたらきをすることが明らかとなった。 4.逃避行動の陰影反応の中枢メカニズムを調べるため、光オフ刺激に対する反応を脳・食道下神経節・腹髄で細胞外記録した結果、脳のほぼすべての領域で多くのニューロンの同期的発火が観察された。脳全体の一過的活性化は逃避行動の陰影反応に関与するらしい。 これらの結果をもとに、来年度はミツバチ等における、より高次な視覚機能の中枢機構の解明をめざす。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] J.Okada: "Neural Mechanisms of the Shadow-induced Pause of Escape Running in the Cockroach Periplaneta americana" Zoological Science. 14(in press). (1997)
-
[Publications] K.Kagosaki: "Roles of the Vibration Receptors in the Escape Response of the Cockroach,Periplaneta americana" Zoological Science. 14(in press). (1997)