1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本近海の干潟の普通種であったツバサゴカイを絶滅させないための基礎研究
Project/Area Number |
09740645
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
西 栄二郎 千葉県立中央博物館, 動物学研究科, 学芸研究員 (50280748)
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Keywords | 分類学 / 多毛類 / 普通種 / 干潟 / ツバサゴカイ / 剛毛 / 東京湾 / 絶滅 |
Research Abstract |
干潟の普通種として知られている環形動物門多毛類、ツバサゴカイ(ツバサゴカイ属の1種)の分類に関して、これまでは国内に1種とされていたものを、本研究に於いて最低でも6種のツバサゴカイ属多毛類が分布することを確認した。そのうちすでに種名が確定しているのは東京湾や三浦半島、有明海の干潟に産する1種と沖縄のサンゴ礁域に分布する1種のみである。このほかに、天草、伊豆半島、千葉県勝浦から未同定の4種類の標本が得られており、うち2種については未記載種であることを確認し、現在記載論文の準備中である。各種間の形態の違いは、棲管がU字状か直線状か、膜質か砂粒を固めた粘液質か、群居するか単体か、頭部に眼点があるか無いか、胸部の体節数、腹部の疣脚が単葉、か2葉、または3葉に分かれているかどうか、腹部背側の疣脚が棒状か葉状か、であらわされる。これらの形態を北米や欧州の博物館から借用した標本と比較、検討した。 関東近海のツバサゴカイの個体数に関しては、干潮時に完全に空気中に干出する場所に於いては、館山湾と横浜の野島海岸に於いて数個体が確認されたのみであった。水深2-10mの地点に於いては横浜沖や千葉県船橋沖等においてもU字状の棲管が認められるが、潮干帯に分布する種と同一がどうか、まだ確認できていない。関東近海の潮干帯においては絶滅にちかい状態にあるといっても過言ではないと思われる。今後、各地での正確な個体数や分布密度の把握が必要である。
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