1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740649
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
國松 豊 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80243111)
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Keywords | ニホンザル / マカカ属 / 化石 / 種内変異 / 歯牙 |
Research Abstract |
霊長類進化の解明において,化石の研究は大きな役割を果たしているが,化石資料の中には,しばしば様々な形態的変異が含まれている。その変異が果たして種の違いを示してしるものなのか,あるいは単に種内変異にとどまるものなのかを決めるのは,しばしば難しい。たとえば,ケニア共和国ルシンガ島から発見された初期類人猿プロコンスル属の資料はサイズの点でいちじるしい変異を含んでおり,伝統的にはサイズの違う2種が認められているものの,オスとメスのあいだの性差のひじょうに大きい1種しかないと主張する研究者もいる。このような状況を考えると現生霊長類に見られる種内変異の研究が重要になるのである。化石としてもっとも残りやすいのは歯牙であるため,歯牙形態の種内変異を押さえることが肝要である。ヒト以外の霊長類のなかでもっとも多くの標本が使用できるのはニホンザルであることから,本研究ではニホンザルの歯牙形態に重点をおいて種内変異を調べることにした。本年度は,京都大学霊長類研究所に保管されているニホンザル(Macaca fucata)の骨格標本を対象にして,マカカ属の他種もときおり参照しながら,主として歯牙の非計測項目の観察をおこなった。副次的咬頭の出現,舌側歯帯・頬側歯帯の発達,異常な咬頭や歯の出現,萌出の以上などを観察対象とした。本年度はまだ非計測的形質の評価基準を検討する段階にとどまったが、観察の過程で,第四大臼歯の萌出など興味深い事例も得られた。次年度は,本年度の作業をもとに,ニホンザル歯牙形態の変異の調査を非計測・計測の両面から進める予定である。
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