1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740651
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Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
海部 陽介 国立科学博物館, 人類研究部, 研究官 (20280521)
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Keywords | 咬耗 / 時代変化 / 古人骨 |
Research Abstract |
本研究では、縄文、弥生、古墳、鎌倉、室町、江戸、現代の各時代の古人骨資料を用いて、日本人における歯の咬耗パターンの時代的な違いを分析した。弥生時代人は北部九州・山口地方出土のいわゆる渡来系弥生時代人資料で、他は、主に関東地方を中心とする地域出土の資料である。本研究では、資料選定基準を十分に吟味した、大臼歯部だけでなく前歯も含む歯列全体の咬耗パターンを分析した、咬合面咬耗だけでなく隣接面咬耗についても分析したなど、咬耗パターンについてこれまで十分に検討されてこなかった側面を調査している。予備的分析の結果、以下のような新知見が得られた。 1.大臼歯部の咬耗速度は、縄文時代人で最も速いが、弥生・古墳・鎌倉時代人も縄文時代人にひけをとらないぐらい速い。一方、江戸・現代では明らかに咬耗速度が減っている。 2.縄文時代人では後歯だけでなく前歯の咬耗が非常に激しい。鎌倉時代人は、大臼歯の咬耗度に比べ、前歯の咬耗度は江戸や現代と殆ど違わない。弥生時代人は、縄文時代人と鎌倉時代以降の集団の中間的傾向を示す。 3.隣接面咬耗についても、ほぼ前歯の咬耗パターンと一致した傾向が認められた。すなわち、縄文時代人で咬耗による近遠心系の損失が最も大きく、鎌倉時代以降の集団では小さく、弥生時代人は中間的である。 4.以上の大まかな傾向には、若干の男女差が認められる。 今後、より詳細な分析を行ってこれらの結果を確認するとともに、このような咬耗パターンの時代変化を生じた原因を検討する。
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