Research Abstract |
新紫外波長可変固体レーザーはその広い利得帯域幅にもかかわらず,直接の超短パルス発生はcw発振が難しいため,チタンサファイアレーザーの様なKerr効果による超短パルス発生は不可能であり,別の方法を適応する必要がある。自己注入同期パルス列法による擬似モード同期パルス列発生法は,Q値の低い短共振器で短パルスを発生させ,外部共振器からの遅延帰還により注入同期することにより,再生増幅的に短パルス列を発生させ利得媒質からの効率的エネルギー取り出しを行う方法である。この方法を実現したレーザーからは,Qスイッチモード同期パルス列の様な出力が期待される。実際に3cm共振器長のQ値が低い(70%,5%反射率の共振器鏡使用)Ce : LLFレーザーから,750psec,3μJ,325nmの単一パルスを得ることが出来た(40mJ,KrFレーザー励起)。この出力を共振器長1.1mのフィードバックレーザー共振器で遅延し利得媒質に帰還させることにより,全パルスエネルギー60μJのピコ秒パルス列を発生させることに成功した。これにより紫外短パルス列の直接発生が固体レーザー媒質で初めて実現された。さらに同様の方法を,QスイッチNd : YAGレーザーの第4高調波励起のCe : LiCAFレーザーに適用した。1.5cm共振器長のQ値が低い(100%,20%反射率の共振器鏡使用)Ce : LiCAFレーザーから,600psec,45μJ,290nmの単一パルスを得ることが出来た(励起条件;20mJ,266nm,10nsec,1Hz)。この出力をフィードバックレーザー共振器で遅延し利得媒質に帰還させることにより,全パルスエネルギー230μJのピコ秒パルス列を発生させることに成功し,その内の8μJを取り出した。これにより,励起器源を含めて全固体である紫外短パルスレーザーが可能となった。より大きな出力を得るために,Ce : LiCAFより構成される発振/増幅システム(MOPA)を構成した。発振器には,発振効率が高いとされるCe : LiCAFを用いQ値の低い短共振器を作製した,増幅器には飽和エネルギーが高いCe : LiCAFを用い共焦点4光路増幅光学系を構成し,単一のQスイッチNd : YAGレーザーで励起を行った。現在のところ,発振器(3mJ励起)から289nm,1nsec,1mJのシ-ドパルスを増幅することにより、1ns,14mJs(14MW)の出力を得ている(80mJ励起)。さらに発振器の短パルス化や,多段増幅系の構築することにより,高ピーク出力化が計られるものと期待される。また,波長可変の発振器に置き換えた全固体紫外Ce : LiCAF発振/増幅システム(MOPA)とNd : YAGレーザーの基本波の和周波により,223-232nmの紫外光が最大エネルギー0.5mJで得られている。
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