1998 Fiscal Year Annual Research Report
粘弾性管内の新しい波束の伝搬速度の定義に基づいた測定に関する研究
Project/Area Number |
09750070
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
長谷川 光司 宇都宮大学, 工学部, 助手 (50272761)
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Keywords | 粘弾性管 / 群速度 / 速度分散 / 動的弾性率 |
Research Abstract |
柔軟性のある管の内側を音波が伝搬すると,音速が周波数に依存して変化する速度分散現象が生じる.このような速度分散領域において,従来の定義による群速度は,壁面振動の共振周波数付近で発散してしまい,本来の物理的意味を失ってしまう.そこで本研究は,電磁波の分野において新たに定義された群速度の理論に基づき,粘弾性管内の音波の群速度について理論的な検討を行い,実験を通して理論解析の妥当性の検証を行った. 平成9年度には,管内音波の群速度の理論的な検討を行い,シリコーンゴム管を用いた実験により,管内媒質が空気の場合の波束の伝搬速度を測定した.その結果,実験値は理論解析の値と比較的よく一致した. 平成10年度には,まず,シリコーンゴム管の弾性定数を簡易かつ高精度に求めるため,TSP(Time-Stretched Pulse:時間引き延ばしパルス)を管内に伝搬させ,音波の位相速度及び吸収係数の測定を行い,その結果を用いて管壁の動的弾性率及び動的粘性率を算出した.そして,求めた弾性定数をもとに,管内での音波伝搬の数値シミュレーションを行った.また,管内媒質が水の場合の音波伝搬実験を行い,管壁面の弾性振動が支配的に働く管壁モード,内部の流体が支配的に働く流体モードを分離して測定した.その結果,位相速度は管壁モードの方が速く,音波吸収は流体モードの方が大きいことがわかった.しかしながら,両モード共に,速度分散領域においては,音波吸収が著しく大きな値を示し,波束の伝搬速度を測定することが困難であった. 今後は,速度分散領域での波束の伝搬速度の測定精度を向上させるため,駆動源および受波センサについて検討する必要がある.
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[Publications] 荒井,目加田,長谷川,春日,鎌倉: "粘弾性チューブ内での波束の伝搬" 日本音響学会平成10年度春季研究発表会講演論文集. I. 581-582 (1998)
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[Publications] 荒井,長谷川,春日: "TSPを用いた粘弾性チューブの弾性定数の推定" 日本音響学会平成11年度春季研究発表会講演論文集. I. 525-526 (1999)