1997 Fiscal Year Annual Research Report
2ツの異なる複雑液体複合系における内部秩序間の競合と動的結合
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09750072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 潤 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10200809)
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Keywords | 液晶 / リオトロピック / 揺らぎ / 動的結合 / ブラウン運動 / ラテックス / ブラック散乱 / 内部自由度 |
Research Abstract |
究極的な高機能性を有し、複雑な構造を持つ生体組織ですら、実は天文学的な数の分子の集合体であり、あたかも意志を持つかの如く、振る舞うこれらの多数の分子の協同運動は、単純な物理法則に基づいて決定されていることは疑う余地がない。液晶・ガラス・ゲルといった多くの内部自由度を有するこれらの物質群を総称して、“複雑流体"と呼んでいる。本研究では、異なる2つの複雑流体系を混合し、2つの異質な内部秩序が競合して存在するために起こる、内部構造間の相互作用を研究することを目的とする。この新しいタイプの相互作用を基にして、複合系においては、多種多様な複合構造の形成が期待され、さらには準結晶的秩序・超構造等の特異な新しい構造が生まれる可能性を秘めている。さらに、時間に依存する外場により、内部自由度の運動が励起できる場合、系内部の運動間の結合を基に、新しい動的構造・秩序の創生が起こると考えられる。本研究では、これらの新しい秩序や動的相互作用の発見とそのメカニズムの探求を行うことを目的とする。 本研究では、膨潤状態のスメクティック相に、リオトロピックラメラ液晶の膜間距離よりも、小さいラテックス粒子を混合し、液晶の波打ち揺らぎとラテック粒子のブラウン運動という2つの揺らぎモード間の動的結合を研究した。このため、まず時分割ブラッグ光散乱と誘電率を同時に測定できるシステムを開発した。この装置を用いて、(1)電場が無い場合に、層状構造のブラッグピークのラテックス粒子の濃度・粒径と、両親媒性分子濃度依存性を測定した。この結果から、等方的な粒子の熱的なブラウン運動が層状構造に及ぼす効果を明らかにした。(2)次に、交流電場を印加することにより、ラテックス粒子の振動運動を励起し、異方的で、単一の周波数を持つ粒子の運動が層状構造に与える効果を測定した。この電場効果の周波数・強度依存性から、層状構造の揺らぎの特徴的時間・特徴的波長を見積もることに成功した。(3)現在、揺らぎの特徴的時間、波長の両親媒性分子濃度依存性を解析し、膜の揺らぎのミクロな時間・空間スペクトルに対する、流体力学的理論の予測との比較検討を行っている。
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[Publications] 山本 潤、田中 肇: "流れによるセッケン2分子膜構造の秩序化" 応用物理. 66. 1079-1083 (1997)
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[Publications] Jun Yamamoto・Hajime Tanaka: "Shear-induced Sponge-to-Lamellar Transition in a Hyper-Swollen Lyotropic System" Physical Review Letters. 77. 4390-4393 (1997)