1998 Fiscal Year Annual Research Report
2つの異なる複雑流体系における内部秩序間の競合と動的結合
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09750072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 潤 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10200809)
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Keywords | 複雑流体 / 光散乱 / コロイド粒子 / 粒子間相互作用 / 協同運動 / リオトロピック液晶 / 膜間距離 / 波打ち揺らぎ |
Research Abstract |
究極的な高機能性を有し、複雑な構造を持つ生体組織ですら、実は天文学的な数の分子の集合体であり、あたかも意志を持つかの如く、振る舞うこれらの多数の分子の協同運動は、単純な物理法則に基づいて決定されていることは疑う余地がない。液晶・ガラス・ゲルといった多くの内部自由度を有するこれらの物質群を総称して、“複雑流体"と呼んでいる。本研究では、異なる2つの複雑流体系を混合し、2つの異質な内部秩序が競合して存在するために起こる、内部構造間の相互作用を研究することを目的とする。本研究では、リオトロピック液晶とコロイド粒子の混合系を用いて、コロイド粒子のブラウン運動が、液晶秩序に及ぼす効果と、逆に液晶秩序に誘起される見かけの粒子間相互作用について新しい秩序の発見や、揺らぎのモード間の動的相互作用の発見とそのメカニズムの探求を行うことを目的とする。 第1年目は、まず時分割ブラッグ光散乱と誘電率を同時に測定できるシステムを開発し、主に[膜間距離>ラテックス粒径]の系を研究した。この装置を用いて、(1)電場が無い場合に、層状構造とラテックス粒子の濃度・粒径依存性を測定した。これより等方的な粒子の熱的なブラウン運動が層状構造に及ぼす効果を明らかにした。(2)次に、交流電場を印加することにより、電場効果の周波数・強度依存性から、層状構造の揺らぎの特徴的時間・特徴的波長を見積もることに成功した。 第2年目は、主に[膜間距離<ラテックス粒径]の試料を用いて、見かけの粒子間長距離引力の研究を行った。(1)粒子分散状態及び液晶相転移に関する複合型の相図の作製を行った。実空間・波数空間の相補的な測定法を同時に用いることにより、広帯域な空間分解能を持つ観測を行った。(2)コロイド粒子の安定性を議論したDLVO理論に、得られた上記粒子間引力の距離依存性の表式を用いて、平衡状態における理論的相図の作製し、実験結果と比較した。
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[Publications] 山本 潤・田中 肇: "流れによるセッケン2分子膜構造の秩序化" 応用物理. 60・10. 1079-1083 (1997)
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[Publications] E.M.Trentjev,M.Warner,R.B.Meyer and Jun Yamamoto: "Electro-Mechanical Fredericks Effect in Nematic Gels" Phyiscal Review E. (In press). (1999)