1998 Fiscal Year Annual Research Report
心筋繊維・血管間の力伝達機構の解明と心臓壁の微視的モデル化に関する研究
Project/Area Number |
09750111
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 宏 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (00220400)
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Keywords | 心筋 / 血管 / 平滑筋 / 脂肪層 / 有限要素解析 |
Research Abstract |
本年度は生体軟組織を構成する能動的構成要素が心臓・血管系の生理的変形と力の伝達に及ぼす影響について理論的側面から解明した.血管の有限要素モデルは平滑筋組織に相当する能動的要素と弾性・膠原線維組織に相当する受動的要素が交互に層状に存在する円筒モデルとした.能動的要素は平滑筋の配向する血管の円周方向に収縮応力を発生する.また受動的要素は非圧縮等方のひずみエネルギ密度関数で表現される.活性状態は従来,同じひずみでの最大発生力に対する現在の発生力の比として定義して,そのレベルを表現していた.本研究では平滑筋が収縮応力を発生する際に重要な役割を果たすカルシウム濃度に対応する血管収縮剤のノルエピネフリンの濃度を活性状態を表現するパラメータとして導入した.これを用いて,残留ひずみの解放としての血管開き角の変化に関してノルエピネフリンの投与による数値シミュレーションを行ったところ,新たに導入したパラメータは従来のパラメータに比べて,活性化とそれに伴う開き角の変化の間の関係をより線形的に記述できた.また上述のモデルに基づいて,心筋と血管およびその間の脂肪層からなる有限要素モデルを作成して,心筋組織の変形が血流抵抗の変化に及ぼす影響について,平滑筋が非活性状態と活性状態にある場合とで比較検討した.本モデルにおいて心筋と脂肪層は非圧縮等方のひずみエネルギ関数で表現し,脂肪層は心筋や血管に比べて容易に変形するように材料定数を定めた.血管軸に垂直および平行な向きに10%の伸びを心筋壁に与えて,血管内腔の変形とそれに伴うポアズイユ流を仮定したときの流動抵抗の変化を評価した結果,平滑筋が活性状態にある場合には,管軸方向の心筋の伸び変形に対する血管流動抵抗の増加が緩和される傾向にあり,脂肪層の存在は心筋の伸び変形に対する血流抵抗の増加を助長する傾向にあることが示された.
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