1998 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡と分子動力学計算法を用いた窒化ケイ素表面力学特性の実験的理論的研究
Project/Area Number |
09750113
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾方 成信 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (20273584)
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Keywords | 窒化ケイ素 / すべり変形 / き裂進展挙動 / 分子動力学法 / 第一原理計算 / 表面 / 原子間力顕微鏡 / ナノインデンテーション |
Research Abstract |
1. 窒化ケイ素表面に微小硬度計にて10から200gfまでの圧痕をつけ,原子間力顕微鏡にて観測を行なった.その際,20gf以下の比較的小さい荷重においては,圧痕縁よりのき裂がほとんど発生せず,延性的挙動を示していることが推測された. 2. 20gf以下の荷重では,1つの結晶粒内で圧痕が閉じていたことから,以上の延性的挙動が結晶粒内のすべりに起因しているものと考え,以下のように,分子動力学計算にて結晶粒内のすべりについて詳細に検討した.また同時に,き裂進展挙動についても検討を加えた. (a) 窒化ケイ素に対して第一原理分子動力学計算を適用し,格子定数,弾性定数,内部座標を評価し,現在までに報告されている結果と比較し,矛盾のない結果であることを示した,また,すでに中野らによって提案されている窒化ケイ素についての原子間ポテンシャルの関数形が,この第一原理計算の結果を比較的良く表現する良好なポテンシャルであることを示した. (b) この中野らのポテンシャルを用いて,実験にて報告されているすべり方位にせん断変形を加えていき,すべり変形を生じさせた. i. α型結晶では報告されている方位はすべてすべりやすいものの,方位によってすべりの領域の幅に差があった.特に,幅の広いすべり帯が生じた変形では,すべり帯内部がアモルファス的になっていることが分かった. ii. β型結晶においてはすべりは1から2原子層程度の狭い領域内で起こることが分かった.また,この変形で結晶構造は乱れず,転位の運動のようなものが確認できた. 3. β型結晶にき裂を導入し,き裂進展時の応力拡大係数を評価した.シミュレーションにて得られた結果は0.7MPa√mと実験的に調べられている値2〜3MPa√mに比べ小さくなったが,線形弾性論に基づく結果0.88MPa√mと良くあい,分子動力学シミュレーションの破壊現象への有効性を示した.
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[Publications] 尾方・北川: "分子動力学計算による格子欠陥を有する窒化ケイ素セラミックスの力学的特性の評価" 日本機械学会第76期全国大会講演論文集(II). 98・3. 107-108 (1998)
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[Publications] 安本・北川・中谷・尾方: "α-窒化ケイ素の変形特有の分子動力学法による検討" 日本機械学会関西支部第74期定時総会講演会. (発表予定).
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[Publications] N.Hirosaki,S.Ogata and H.Kitagawa: "Molecular Dynamics Simulation of Crack Propagation in β-Silicon Nitride" Transactions of the Materials Research of Japan. (掲載予定).
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[Publications] N.Hirosaki,S.Ogata and H.Kitagawa: "Molecular Dynamics Study of the Stress Distribution near a Crack Tip in β-Silicon Nitride" Material Science Research International. (掲載予定).