1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750125
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Research Institution | Niihama National College of Technology |
Principal Investigator |
松英 達也 新居浜工業高等専門学校, 材料工学科, 助手 (60270352)
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Keywords | TiN / TiC / X線残留応力測定 / PVD / イオンボンバード |
Research Abstract |
鉄鋼基板上にイオンプレーティング法によりTiNもしくはTiCを被覆した試料に対して被覆膜と基板側界面層のX線による残留応力測定を行った。その結果、被覆膜には成膜過程において被覆膜と基板との熱膨張係数の差から発生する熱残留応力よりも一桁以上大きい約-5.5〜4GPaの強い圧縮残留応力が存在し、基板側界面層にも弱い圧縮の残留応力が存在していることが明らかとなった。被覆膜中の強い圧縮残留応力は成膜過程中に受けるイオンによる原子レベルでのショットピーニング(イオンボンバードとも呼ばれる)が原因と考えられる。また、基板側の界面層における圧縮残留応力の発生原因は、被覆膜の成膜時に基板表面の酸化層除去のために行うイオンクリーニングにより被覆膜と基板との界面層に基板原子と被覆原子とが混在する中間層が形成されるためと思われる。この中間層が存在することにより被覆膜は基板に対する高い密着性を持ち、さらに被覆膜中に存在する圧縮残留応力を支える要因にもなっていると考えられる。 また、被覆材に熱処理を加えることによる被覆材の残留応力の変化を測定した。その結果、被覆膜中に存在した圧縮残留応力は加熱温度が上昇するにしたがって減少していき最終的には加熱温度から算出される熱残留応力とほぼ同じレベルとなることが明らかとなった。これは、成膜中のイオンボンバードにより形成された真応力が熱処理により緩和されるためと考えられる。 今後の研究の予定としては、基板側界面層の熱処理に対する残留応力変化を調査し、被覆膜の残留応力変化と比較することで、被覆材として熱処理に対しどのような影響を受けるかについて検討する。
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