1997 Fiscal Year Annual Research Report
焦電性高分子フィルム上へのダイヤモンド状炭素膜の合成
Project/Area Number |
09750132
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大竹 尚登 東京工業大学, 工学部, 助教授 (40213756)
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Keywords | ダイヤモンド状炭素膜 / 焦電性 / 高分子フィルム / スパッタリング / 耐摩耗コーティング |
Research Abstract |
機能性高分子材料が注目を集めており,そのなかでポリフッ化ビニリデン(PVDF)は,焦電性を有する高分子材料として,センサー等への適用が期待されているが,機械的強度が低いために,耐摩耗性の観点からその適用分野が制限されることが問題となっている. 本研究は,PVDFフィルム上にその性質を損なうことなしにダイヤモンド状炭素膜(DLC膜)を合成するために,dcマグネトロンスパッタをベースにした合成方法を提案し,種々の条件でDLC膜の合成を試み,得られたDLC膜の機械的強度の評価を行ったものである.まず,基板に印加するrf出力を変化させて合成を行った.基板ホルダは水冷されている.合成された膜は階段状の表面性状を示し,その凹凸はrf出力が大きいほど顕著になった.これは,rf出力が大きいと基板温度が上昇してrf出力50Wの場合に90℃程度になり,熱膨張率の小さいDLC膜が波打つためと考えられる.この膜の厚さは約2μmである.合成された膜の硬さ測定を行った結果,rf出力が2Wと小さい場合にはHv1200程度と小さく,rf出力が30W〜50Wの場合にはHv2800〜3200のほぼ一定の値を示した.この硬さの値は,DLC膜に対して報告されている値の範囲内にあり,明らかにDLC膜であると判断される.水冷基板ホルダを用いた場合,PVDF上にDLC膜が合成できることは確認できたが,フィルムが変形してしまう問題が生じた.そこで,冷却媒体を水から液体窒素にすることにより,フィルムの変形を抑えることを試みた.このときのフィルムの曲率半径は80mmと,水冷の場合と比較して7倍も大きくなっていたことから,この冷却方法がフィルムの変形を抑制するのに有効であることがわかった.また,硬度測定の結果からは,Hv3000程度であったことから,本方法によりPVDFフィルム上に平坦なDLC膜を合成できることがわかった.
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