1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750171
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
服部 泰久 東海大学, 工学部, 講師 (60287034)
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Keywords | ペ-パ摩擦材 / 多孔質弾性 / 粘弾性 / 連続体の振動 / 湿式クラッチ |
Research Abstract |
厚さ0.5mmほどの湿式ペ-パ摩擦材試料を潤滑油中で圧縮加振し,その際の荷重変動と厚さ変動(およそ1μm)を精密に連続測定できるような実験装置を作成した.装置構造の工夫や荷重検出部の剛性確保によって,構造の変形や構成部品の慣性力の影響はごくわずかであることを確認した.直動案内機構(ダブルカンチレバ-)の共振の影響は,板ばねの長さによって固有振動数を変化させることで回避できた. この実験装置で,標準的材質で接触面形状が一辺5mmの正方形の摩擦材試料と実用油相当の潤滑油試料を用い,潤滑油の有無(乾・湿)と加振周波数をパラメータにして実験を行った.動的変形特性の評価は,荷重と変形量の測定波形間の振幅比と位相遅れから,試料をVoigt固体(2要素線形粘弾性固体)でモデル化したときの弾性率・粘性率を算出し,これらを比較することで行った.その結果,まず乾の場合,加振周波数1Hz以下の低周波数ではペ-パ摩擦材固有のクリープ挙動のため位相遅れを生ずるが,数Hz以上の高周波数では位相遅れはなく(粘性率が0に近づき)弾性的な挙動を示した.次に湿の場合は,低周波数で乾の場合に比べて位相遅れが大きく,周波数増加につれてこの位相遅れは減少するもののなくなることはなく(粘性率は0にならず),またそれに伴い弾性率の増加が見られた.これらの傾向は多孔質弾性理論から導かれる定性的な予測と一致していることから,以上の結果はペ-パ摩擦材の変形と内部に含まれる潤滑油の流動の相互作用が固液混合体の見かけの動的変形特性に影響を及ぼしていることを実験的に確認したものと考えることができる.
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