1998 Fiscal Year Annual Research Report
気管模型の中の流れの観察(巧妙なガス交換機構の解明)
Project/Area Number |
09750187
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
福島 千晴 岐阜大学, 工学部, 助手 (30262752)
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Keywords | 呼吸流 / 気管支 / 分岐管 / 渦度 / 二次流れ / 縦渦 / 流れの可視化 / 流れの混合 |
Research Abstract |
ヒトの気管は、20回にも及ぶ分岐を経て肺胞に至る複雑な管路系から成り、巧妙なガス交換を行っている。本研究では、第1分岐部と第2分岐部を有するヒトの気管模型を透明な樹脂で製作し、模型内の呼気流れおよび吸気流れについて可視化実験(レイノルズ数Re=500〜4000)を行った。模型内の流路は、工業上多用される曲がり管路に比して、分岐までの距離が著しく短く、気管特有の曲率と分岐部の断面形状を有するが、気管模型内の呼気および吸気流れにも、異なった形態の複数本の「縦渦」 (管軸方向に軸を持つ渦)を伴う二次流れが誘起され、これらの縦渦の形態が、管路内の「呼気」及び「吸気」の基本的な流れを特徴付けることが分かった。そして、これらの縦渦の生成は、管路の曲率にもとづく遠心力の影響に加えて、気管内特有の生成機構が存在し、気管内流の速度分布、エネルギー散逸、及び流れの混合機構に著しい影響を及ぼすことが明らかにされた。 主要な実験結果は、次のようである。 1. 呼気合流部におけるよどみ点で、流れの方向が急変し、縦渦を生成する渦度の主流方向成分が生ずる。さらに、呼気合流部のよどみ点上流に小さなはく離渦が形成される。Re<3000の場合には、このはく離渦から、下流の縦渦(管路の曲率の影響で生成される)に渦度が供給される。Re>3000の場合には、このはく離渦から供給される渦度は新たな縦渦を形成する。 2. 吸気分岐部先端近くに首飾り渦に似た2組の縦渦が形成され、この渦が上流の縦渦の変形と連成を促し、下流の管路に新たな縦渦群を構成する。 3. これらの縦渦の生成によって、管路断面内のエネルギー散逸が増大するが、流体要素の伸張と曲折をもたらし、組織的かつ効率的な流体の混合を促すと考えられる。
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[Publications] 永田拓, 粟野雅智, 中山仁, 福島千晴: "流れの可視化画像における速度勾配テンソルの自動計測(水素気泡法により可視化された渦領域の流れ)" 可視化情報三重講演会講演論文集. 18・2. 5-6 (1998)
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[Publications] 永田拓, 中山仁, 粟野雅智, 福島千晴: "円柱後流中のTaylor仮説画像と渦度分布" 可視化情報三重講演会講演論文集. 18・2. 79-80 (1998)
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[Publications] 永田拓, 粟野雅智, 中山仁, 福島千晴: "円柱の後流中のRod状渦とSheet状渦" ながれ. 17. 145-146 (1998)